復活した海賊たちは治安の悪いセントビンセント及びグレナディーン諸島にいるのか?

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片道 40 時間をかけてツバルにも行ってしまうドメイン島巡り、第 15 回目はセントビンセント及びグレナディーン諸島(以下:セントビンセント)を訪れました。ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は「Venture Capital(投資会社)」などの意味でも使われている「.vc」です。なお、本文内のドル表記は、すべて東カリブ・ドルとなります。※1ECD=40.96 円で計算

◆セントビンセント、どこにある?

カリブ海の小アンティル諸島にある、火山島のセントビンセント島と珊瑚礁のグレナディーン諸島から成る島国で イギリス連邦に加盟する英連邦王国の 1 つです。

= 目次 =

◆治安が悪いとされるセントビンセントを散策

◆復活した海賊

◆シャーロット砦で海賊船を探す

◆あんまり魚は食べない?セントビンセントの郷土料理

◆西半球で最も古い植物園でマラカスの起源を知る

◆暫定的に世界遺産認定された古代カリブの線刻画

◆日本の協力で作られた「リトルトーキョー」

◆現地でのSIM 購入方法&速度調査 ~セントビンセント編~

◆「.vc」のレジストリを訪問


◆治安が悪いとされるセントビンセントを散策

セントビンセントは、殺人発生率国別ランキング(2016 年)8 位で、路上等における窃盗や強盗に注意が必要とされています。注意を払いつつ、首都キングスタウンから散策スタートです。

さっそく目についたのは、ネットカフェトンガ王国では快適なネット環境を求めて彷徨いましたが、セントビンセントはどうでしょうか?

セントビンセントの国旗と同じカラーリングの階段を登って 2 階へ。

入口に到着。

中へ入ってみると、電気屋の一角がネットカフェになっていました。

2 ドル(約 80 円)で、15 分間利用可能なお試しプランを購入。ブラウザを立ち上げます。

URL を見ると、セントビンセントの ccTLD“.com.vc”ドメインでした。続いては、回線の速度を測ってみます。

速度テストサイトの計測結果は、10Mbps 。日本のネットカフェとは異なり、周りの利用者はYouTube などの動画共有サービスを見ている様子はありません。調べ物には問題のない速度ではないでしょうか。

セントビンセントでは快適なネット環境に巡り合うことができました。

多くの人が出入りするお店に行ってみると、日本でもお馴染みのケンタッキーフライドチキンでした。知っているお店を見ると少し安心します。セントビン セントにはマクドナルドがないため、貴重なファーストフード店です。

お昼時ということもあって、大混雑。

メニューを見ると、デザートも充実しています。

日本のチキンフィレサンドに近い“Zinger”をポテト、ドリンクとセットで注文。17.05 ドル(約 700 円)。”Zinger”は、ピリ辛のマヨネーズソースに揚げたての鶏肉がサンドされた、万国共通の味。

ドリンクは、“Red Kola Champagne”という炭酸飲料をチョイス。コーラ(Cola)かと思いましたが、スペルが違います

かき氷のイチゴシロップのように赤く、強い甘みを想像しましたが、酸味のあるフルーツジュースでした。どうやら、同じくカリブの島国であるトリニダードトバゴで作られている飲料のようです。カリブ地域限定メニューではないでしょうか。


◆復活した海賊

“海賊”のイメージが強いカリブ。1660 年代から 1730 年代のカリブ地域は、海賊が最も暗躍した時代です。現代では、海賊をモチーフにした作品も多く、漫画「ワンピース」に登場する“黒ひげ”や” 白ひげ”は、カリブ海を荒らしていたエドワード・ティーチという実在の海賊がモデルとされています。もう海賊は過去のものと思われていますが、実はラテンアメリカとカリブ海地域では 2017 年に 71 件の海事事件が発生、前年比で 163%の増加となりました。 セントビンセントもまた、海賊行為のホットスポットとされているのです。と言うことは、本物の海賊に会えるかもしれない?!

まずは、海賊のことを知るために映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の撮影地ワリラボウへ。

キングスタウンから車で約 30 分の場所にありました。

とても古めかしいこの建物。扉には「Port Royal Set Buildings」と書かれています。ポートロイヤルはジャマイカの町のことで、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の劇中で、ここは「ジャマイカのポートロイヤルにある建物」として登場したセットでした。

まるで貸出用ビーチパラソルのように並ぶ棺。

建物の中に入ると、主演者の写真や当時のスケジュールが展示されています。

ジャックスパロウ船長役のジョニー・デップを始め、キャストの貴重なオフショットもありました。

写真だけでなく小道具やセットも展示。

別のセットと思しき建物に入ると、大量の古い電話とレジスター等がずらりと並ぶ、映画とは無関係の倉庫でした。しかし、なぜか倉庫に麦わら風の帽子が・・・もしや、日本で最も有名な海賊も来ているのでは?!

海賊たちが集まり、当時は「世界で最も豊かで最もひどい町」と言われたポートロイヤル。港の入口には、縛り首になった海賊がそのままの状態で見せしめとして放置されたと言われています。入り江に目を向けると、“アーチ状の岩”が。劇中に登場する「海賊の亡骸が吊るされていた岩」かもしれません。

セットの大砲からロックオンしていますが、海賊船ではありません。

拷問器具「さらし台」もちゃんとありました。

セットで休憩中のわんこ。骨を差し出しても、牢屋の鍵は取ってくれそうにありません。

セットの横に併設されているカフェには、ランチメニューも用意されており、映画について思いを馳せながら食事を楽しめます。

これらのセットは入場無料。ここに来ればカリブの海賊気分を味わえます。本物の海賊に遭遇しても、分かり合える気がしてきました。


◆シャーロット砦から海賊船を探す

キングスタウンの西側にあるシャーロット砦( フォートシャーロット) に移動。1806 年に完成されたこの砦からは、キングスタウンを一望でき、グレナディーン諸島の 1 つであるべキア島を見渡せます。

ここから海賊船を探します。

給油しているかもしれません。

辛抱強く探していたら、日が傾いて来ました。

ごらんの通り、海賊船どころか船自体がいません。

海賊船探しはあきらめます。

敷地内にある建物に入ることにしました。

セントビンセントの先住民が奴隷にされていた時代を伝える絵画が展示されています。

シャーロット砦は無料で開放されている観光名所。多くの観光客に見てほしい思いから、ここに辛い歴史を展示しているのではないでしょうか。ここは絶景のサンセットスポットとしても素晴らしく、地元民も訪れる憩いの場所でもあります。男性ガイドが話しかけて来ますが、有料となりますのでご注意ください。

夕日を撮影した 360°カメラの写真はこちら。

シャーロット砦(セントビンセント及びグレナディーン諸島) – Spherical Image – RICOH THETA


◆あんまり魚は食べない?セントビンセントの郷土料理

夕食時に訪れたのは、アーノス・ベールという地域にある“Mangoz Restaurant and Bar”。

オープンテラス席に通してもらいました。海沿いのため、心地の良い風が吹き抜けます。

地ビールの Hairoun は、ハイネケンのグリーンボトルを思わすようなラガービール。あっさりとした味わいで、油分の多い食事とも相性が良さそうです。

「郷土料理のおすすめをください」とオーダー。言葉では表現しにくい色味のスープが運ばれてきました。こちらはカラルースープと呼ぶそうで、この地域で採れるサトイモ(科)の葉などをミキサーですりつぶし、味付けしたもの。ビジュアルに怯んでしまったものの、青臭さもあまりなく美味しくいただきました。価格は 20 ドル(約 800 円)。

コンク貝を使ったソテーがメインディッシュ。カレーを思わせるスパイシーなソースと、コリコリした貝の食感がとてもマッチしています。アンギラでも食されていたコンク貝は、ここでも人気のようです。価格は、55 ドル(約 2,200 円)。

エビフライもおいしく頂きましたが、海に囲まれた島の郷土料理なのに、なぜか魚料理が出てきま せん。なんでも、豊富な水産資源がありながら、庶民が魚を食べる機会は決して多くないそうです。その為、水産局は「Put a Fish on Your Dish(食卓に魚を!)」のスローガンの下、魚食の普及に努めているとのこと。セントビンセントの人達は、意外と魚料理を食べないのですね。

ここは午前 9 時に開店。閉店時間ですが、Facebook では深夜 2 時、Google マップでは午後 11 時と記載されています。


◆西半球で最も古い植物園でマラカスの起源を知る

多くの自然が残るセントビンセントには、西半球で最も古い植物園があります。1765 年に設立された、ボタニカルガーデンズです。

チケットは大人 1 名で 5 ドル(約 200 円)。入場者 1 名に対して 10 ドル(約 400 円)でツアーガイドを頼めるオプションもあります。

園内に入った途端、コーネリアスという 1 人の男性が話しかけてきました。『私がガイドをするよ』とのこと。ツアーガイドの申し込みはしていないので困惑していると、いきなり始まる解説。植物園の職員なのかも不明のまま、後をついていくことになりました。

イギリス連邦内の国のせいか、園内はイングリッシュガーデンのような雰囲気を感じます。

花や木々を観察していると、コーネリアスが 1 枚の枯葉を渡してくれました。イランイランの葉だそうです。イランイランといえば、シャネル N°5 (香水)に使用されたり、様々なフレグランスに配合されています。枯葉ですが、少し揉んでみると確かに良い香りがしてきました。

頼んでもいない男性ガイド、コーネリアスは次々と色々な葉を千切っては渡してくれます。ゴムノキでは幹の部分に傷をつけて、樹液を見せてくれました。なかなか大胆です。

日本でもお馴染みのシナモン。パウダーやスティックの状態は見かけますが、樹木での姿を見る機会は多くありません。樹皮からは、しっかりとシナモンの香りがしています。

ヤシ科のマラカは、小指の先ほどの果実が

人間の顔のサイズまで大きくなります。比較として、iPhone SE を横に置いてみました。

なお、楽器のマラカスは、この果実を乾燥させて作られたのが始まりとされています。

ミモザ(和名:オジギソウ)を観察していると、おもむろにライターを取り出すコーネリアス。すると、取り憑かれたように火をつけ始めました。

どうやら、熱刺激による葉の反応を見せてくれているようです。ミモザは、先端から順番に小葉を閉ざしていき、最終的には葉全体が垂れ下がりました。ガイドをお願いしていないのに、ここまでやってくれます。

ナツメグの実を拾って割ってくれました。お伝えのとおり、ナツメグとは食べ過ぎると、幻覚症状を引き起こ し最悪死に至る 香辛料です

最後にやって来たのは、セントビンセントの固有種であり国鳥に指定されている、オウボウシインコが飼育されている大きなケージ。コーネリアスが『ハロー!』と声をかけますが、鳥たちの返事はありません。いつもなら、鳥たちも「ハロー!」と言い返してくれるそうです。

カリブ地域の様々な植物や固有種などを間近で見られるこの植物園は、午前 6 時開園、午後 6 時閉園となっています。コーネリアスは、ガイドだったのか、たまたま居合わせただけなのか、わからないままでしたが、熱心にガイドをしてくれたお礼にチップを渡してお別れしました。


◆暫定的に世界遺産認定された古代カリブの線刻画

他部族との争いや、後のヨーロッパ人の侵略によりカリブから姿を消した先住民「アラワク族」が残した線刻画(ペトログリフ)は、カリブの島々に残っています。セントビンセントで見ることができる、ラユー線刻画公園にやってきました。

2009 年に欧州連合との協力で整備され、世界遺産条約リストにも暫定的に掲載されています。

入園料は 1 人あたり 2 ドル(約 80 円)。建物内へ入ると、カリブ地域で発見された線刻画の写真が飾られています。すると、受付兼ガイドの女性がそれぞれを解説してくれました。

しかし、あまりにウィスパーボイスな解説で、何度か聞き直すことに。訪れた際は、最大限に耳を澄ましてください。なお、写真では線刻画が白線で認識出来ますが、見やすいようにデジタル処理をしているとのこと。実物は岩に彫られた線のため、色はついていません。

いよいよ、ガイドさんと共に線刻画の場所へ。

大きな岩が見えてきました。

こちらが 、西暦 300~600 年ごろに作られたとされている線刻画です。薄っすらと、岩の表面に線が見えます。

とはいえ分かりにくいため、写真を拡大して白線でマークしてみました。いかがでしょうか。幾つかの顔が彫られているのが分かります。ガイドさん曰く、母親と子どもの様子が描かれています。

岩の上部にも、顔のようなものが彫られています。こうした線画の意味については、現在も判明していない部分が多くあるようです。

なお、この岩には近寄って触れることが出来ます。ガイドさんが岩とのツーショットを撮影してくれましたが、先ほどのウィスパーボイスはどこへやら、あまり見かけない日本人がいろんなカメラを取り出しては岩を撮影する姿が滑稽だったようで、終始爆笑していたのが印象的でした。

線刻画の謎を解き明かしに、訪れてみてはいかがでしょうか?


◆日本の協力で作られた「リトルトーキョー」

キングタウンに戻りました。治安の悪さを微塵も感じない場所ばかり巡っていたので、気を引き締め直して首都の散策再開です。

ベイストリートを歩いていると、リトルトーキョーと名付けられたバスターミナルがありました。

こちらがワゴン車を改造したバン (Van) と呼ばれる、乗り合い式のバスです。全路線がここから出ています。様々なデザインのバスがありました。日本車も見かけましたが、今のところ「東京」を感じることはできません。

同じ敷地内に、魚市場が併設されていました。活気のある人々の声に誘われて場内へ。

日本でも見たことがあるような、ないような、、多くの鮮魚が売られています。なお、セントビンセントではクジラも食すそうで、“ブラック・フィッシュ”とも呼ばれています。2015 年初頭から、沖合の浮漁礁(FADs)を使った漁業振興に力を入れた結果、この魚市場に大型の回遊魚(キハダマグロ、カジキマグロ等)が水揚げされるようになったと言われています

こちらの女性はレストランのオーナー。いつも魚を仕入れに来ているそうです。

魚市場の外壁にあるプレートには、このキングスタウン魚市場が、日本とセントビンセント及びグレナディーン諸島との間の友情と協力の証として、日本の人々から無償資金協力を得て 2005 年に完成した旨が記載されていました。1980 年代後半に日本の ODA プロジェクトによって建設された魚市場なのです。2005 年の老朽化による改修工事の際も、日本から無償資金協力が行われています。

このような経緯からか、魚市場や併設されたバスターミナル周辺は「リトルトーキョー」と呼ばれています。


◆現地でのSIM 購入方法&速度調査 ~セントビンセント編~

海外用の WiFi レンタルサービスが増えてきていますが、場所によってはカバーされていない区域もあります。このような場合、現地のSIM を購入するという手段があります。

セントビンセントでポピュラーな通信会社は FLOW の SIM を、アーガイル国際空港内で購入しました。

こちらがFLOW のSIM です。店員がアクティベーションまで行ってくれて、とても助かります。購入したのは、1 週間で 500MB のプラン。価格は、15 ドルです(約 600 円)。

アクティベーション後の速度計測結果は 14Mbps。調べ物をするには問題なく、町中でも快適に利用できました。

空港内には FLOW 以外の通信会社は見当たりませんでした。


◆「.vc」のレジストリを訪問

セントビンセントの ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は「.vc」です。地元の出版社やインターネットサービスプロバイダーで使われているのを発見。

今 回 は 「 .vc 」 ド メ イ ン の レ ジ ス ト リ で あ る 、 NTRC ( National Telecommunications RegulatoryCommission)を特別に訪問させて頂きました。到着したのは、キングスタウンの中でもかなり立派なビル。

階段を登っていくと案内が出ています。

NTRC の局長、アポロ・ナイト氏が応対してくれました。「.vc」が投資会社の略として使われていることについては、「レジストリが意図しないことだったけど、ユーザーが増えたのはとても良いこと」と捉えていました。国内でのドメイン利用状況等についても、お話頂きました。

最後に、「vc ドメインはとてもクールなドメインです。また、セントビンセント自体も観光をするのに素晴らしい場所ですよ!」とコメントされたナイト氏は、とても気さくな局長でした。

 

結局、セントビンセントの治安の悪さに触れることはありませんでしたが、これからも細心の注意を払いながら、ドメインのある島を巡って参ります。

 


 

■ 今回訪れた場所

 

■ セントビンセント及びグレナディーン諸島までのアクセスはこちら

■ .vcドメインの詳細はこちら