ナポレオンが流されただけじゃない!Googleが海底ケーブルを敷設するセントヘレナ島は187歳のゾウガメがいて心霊スポットも充実していた

Pocket

イギリスの海外領土であるセントヘレナ島は、フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトが生涯を終えるまで幽閉された流刑の島として知られています。最近では、Google社によって最新テクノロジーの海底ケーブルが敷設されることが発表され、話題になりました。アセンション島でワン切り国際電話の調査を試みようとしたドメイン探検隊は、あなたも知らないセントヘレナ島の魅力を探ってきました。
セントヘレナ島に割り当てられている ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は、「.sh」です。

◆セントヘレナ島はどこにあるのか?

セントヘレナ (Saint Helena) は、南大西洋に浮かぶイギリス領の火山島でアフリカ大陸西岸から2,800km離れた場所にある火山島。面積はわずか122平方キロメートル。「絶海の狐島」と呼ばれています。人口は約4,500人。行政上はイギリスの海外領土セントヘレナ・アセンションおよびトリスタンダクーニャに属する一区域で、公用語は英語です。通貨は「セントヘレナポンド(SHP)」ですが、「英ポンド」も問題なく使用できます。本文内のポンド表記は全て英ポンド。1ポンドは、およそ141円(2019年12月現在)です。


= 目次 =

◆ヨハネスブルグで大ピンチ

◆途中で給油して「世界で最も使えない空港」に到着

◆閉館日でも入れる?!ナポレオン邸とジェイコブズラダー

◆Googleが主導して敷設する海底ケーブルの予定地と噂される場所を発見!!

◆心霊スポットが充実しているセントヘレナ島

◆187歳(天保12年生まれ)のゾウガメ「ジョナサン」に会いたい

◆90歳を超えて初めて日本人に会ったおばあちゃん~セントヘレナ島いろいろ~

◆セントヘレナ島の食事事情

◆現地でのSIM購入&速度調査~セントヘレナ編~

 


◆ヨハネスブルグで大ピンチ

日本からは、シンガポール、ヨハネスブルグを経由してセントヘレナ島へ向かいます。以前は南アフリカのケープタウン~セントヘレナ間を、英郵便事業会社ロイヤルメールの時速15ノット(28キロ)の船で4泊5日かけて行く海路しかなく、運航も月に1回程度でしたが、2017年10月よりヨハネスブルグ空港からエアリンク社の定期航空便が週1回運航するようになりました。

ヨハネスブルグまでは滞りなく順調でした。しかし、セントヘレナ島に向けて出発する時、ヨハネスブルグO.R.タンボ国際空港で問題が発生しました。セントヘレナ島に渡航する際、海外旅行傷害保険に加入していることが義務化されています。我々が持参しているクレジットカードには海外旅行傷害保険が付帯しているので、クレジットカードを提示したところ、チェックインカウンターの女性は「証明書を見せてください」と、カードを無視しました。懸命に英語で説明を試みますが、受付の女性は厳しい表情のまま。「証明書が無いとチェックインできません」の一点張りです。

このままではどうしようもないので、クレジットカードの補償費用が書かれたサイトを見せたところ、ようやくOKが出ました!受付担当者にもよるとは思いますが、念のため外国語で書かれた保険の加入証明書(付保証明書)をプリントアウトしておくことをおすすめします。空港内のインターネット接続環境(wifi)は快適でした。

やっとセントヘレナ島行きの飛行機の搭乗口に辿り着きました。無事に間に合いました。ちなみに、ヨハネスブルグには都市名ドメイン「.joburg」があります。

 


◆途中で給油して「世界で最も使えない空港」に到着

ヨハネスブルグを出発して2時間。飛行機は給油のため、砂漠の真ん中にあるナミビアのウィンドフック・ホセア・クタコ国際空港に立ち寄りました。

着陸すると、機体のハッチが開きました。これからタラップがつけられます。辺り一面砂漠の空港に降りられるなんて!胸が高鳴ります。

客室乗務員より「降りることはできませんよ」と言われてしまいました。着々と給油が続きます。結局、約1時間の給油タイム。ちなみに、ナミビアに割り当てられているccTLDは「.na」です。

ウィンドフック・ホセア・クタコ国際空港を出発して1時間15分後、セントヘレナ国際空港に到着です。2017年にできたばかりということもあって、近代的で立派な空港。

入国税20ポンド(約2,800円)を支払い、入国です。入国スタンプは鳥、出国スタンプは亀。可愛いですね。この島には世界最高齢のゾウガメ「ジョナサン」がいるのです。入国税は、ユーロ、アメリカドル、南アフリカランドでも支払い可能でした。居住者用審査ラインは混雑しているものの、ビジターラインはガラガラ。観光客は多くないようです。

空港内の売店には、お土産用のマグカップ、コーヒー、チョコレートなどが売っています。お土産を全く売っていないアセンション島の空港とは大違い。スナックやジュースなどもあって普通の空港と変わりません。何を以て「世界で最も使えない空港」と言われるのでしょうか?それは、空港の総工費2億8500万ポンド(約406億円)で工期が5年かかり、2016年開港予定が、記念式典開催日の数週間前になって風が強すぎて離着陸が想定以上に難しいことが判明して、試験飛行と再検討に1年以上かけた末、航空機を当初計画のボーイング(Boeing)737型機からエンブラエル190型機に変更することでようやく定期便就航にこぎつけた経緯が原因のようです。※参考 AFP

 


◆閉館日でも入れる?!のナポレオン邸とジェイコブズラダー

フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトが幽閉された流刑の島として知られるセントヘレナ島。そのナポレオンの邸宅「ロングウッドハウス」は、この島の最も有名な観光名所と言って良いでしょう。観光名所や、行ってみたい気になるスポットには、御年79歳のベテランガイドのラリージョンソンさんが連れて行ってくれます。ラリーさんへ支払うガイド料金は、2日間で200ポンド(約28,000円、2名分、空港送迎、チップ代込み)でした。それでは、旅行番組で何度となく取り上げられているロングウッドハウスに行ってみましょう。

空港周辺は火山島だけあって壮大な岩場が広がっています。

だんだん草木が増えてきました。

空港から車で15キロ程の所で、島で一番大きな町であるジェームズタウンが見えてきました。人口は600人程度で高さ150mの谷に囲まれた狭い土地に築かれている町です。

1815年にセントヘレナ島に流されたナポレオンが6年後に死を迎えるまで暮らしたロングウッドハウスに到着。ナポレオンの息吹を感じることができると思うとドキドキします、が、開いてませんでした。我々が訪れたのは週末なのに、なんと閉館しているのです。

ヨハネスブルグでのピンチを乗り越えてやってきた我々です。そう簡単に諦めません。ラリーさんに相談したところ、150ポンド(約21,000円)を支払うと特別に公開してもらえることが判明しました!150ポンドは固定で、参加人数で割ります。なので、2名の場合は1人あたり75ポンドとなります。通常は平日の11時から13時のみオープン、入場料は1名10ポンド(約1,400円)です。

残念ながら建物内は写真撮影不可。ナポレオンが好んで使っていた野戦用ベッドや朝風呂のための湯船もそのまま残っていました。庭の撮影はOK。現在はフランス外務省の管理下にあるため、手入れが行き届いた綺麗な庭園でした。

ナポレオンハウス(セントヘレナ島) – Spherical Image – RICOH THETA

ロングウッドハウスのギフトショップでポストカードを購入。その場から日本に送ったところ、24日後に日本に届きました。

来館者ノートを発見。日本人は我々の他に数人のみ。やはりこの絶海の孤島まで訪れる人は少数なのかもしれません。

ちなみに、ナポレオンがセントヘレナで着用していたブーツは、パリで開催されたオークションにて117,000ユーロ(約1,411万円)で落札されました。

 

ロングウッドハウスの次にメジャーな観光名所と言えば、ジェイコブズラダーではないでしょうか。ジェイコブズラダーとは、699段ある全高183メートルの階段です。1829年に鉄道事業者により傾斜面索道として建設された後、物資を持ち上げる目的で、1871年に王立工兵軍団によって階段として再建されました。

ジェイコブズラダーを登るのであれば隣にあるセントヘレナ博物館で、登頂証明書を発行してもらうことができます。発行料金は2名分で5ポンド(約700円)。後日、証明書は日本に送ってくれるとのこと。証明書発行料金の他に、博物館の入館料金が必要です。金額は寄付制。我々は2名分で10ポンド(約1,400円)を支払いました。18世紀後半の発電所の建物を利用した博物館は、2002年にオープン。昔の軍服、帽子、刀等の貴重な資料が展示されており、島の歴史を今に伝えています。

登頂証明書発行手続きを終え、いよいよ699段の階段に挑みます。ドメイン島巡りで鍛えた脚力で、10分以内の登頂を目指します。

登ってからしばらくして下を見ると足がすくむ高さでした。これ以降は怖くて写真を取れなくなりました。高所恐怖症の方には、おすすめしないスポットです。

ジェイコブズラダーの頂上からは、ジェームズタウンの街並みがはるか遠くに見えます。699段を登り切ったあとに待っていたのは絶景です。結局、登頂には15分くらい掛かってしまいました。

Jacob’s Ladder(セントヘレナ島) – Spherical Image – RICOH THETA

ラリーさんは先に頂上まで車で行って待っていてくれました。

なお、登頂証明書は登頂から約5週間後に届きました。

 


◆Googleが主導して敷設する海底ケーブルの予定地と噂される場所を発見!!

Google主導の海底ケーブルを敷設するプロジェクト「Equiano」を、セントヘレナ政府が招致したニュースが話題になりました。ニュースでは、このビッグプロジェクトの敷設予定地にまで触れていません。現地の方に聞いたところ、その場所はサンディーベイにあるとの噂です。行ってみましょう。

山を越え谷を越え、を繰り返します。

コーヒーを栽培している一帯を通り過ぎると、

道がどんどん悪くなっていきます。

あまりの悪路のため、ここから先はラリーさんの普通乗用車クラスでの進入は不可能とのことで、ここで車を降りることになりました。歩いてサンディーベイを目指します。

15分程歩くと、噂のサンディーベイに到着。

ビーチを散策していると、ケーブルらしき物が?!

これは、ケーブルではなく何かに使われていたホースのような物でした。

謎の漂流物を発見。

まだそれらしき施設は何もない、ただの砂浜ではありますが、現地の方々曰くここに海底ケーブルが敷設されるのではないか、という噂の場所です。将来的には、セントヘレナ島を経由して南太平洋を横断する海底ケーブル網が整備される「ミッドアトランティック・ケーブルハブ」構想があるとも言われています。

Google海底ケーブル予定地(セントヘレナ島) – Spherical Image – RICOH THETA

 


◆心霊スポットが充実しているセントヘレナ島

地図を見ていると、普段地図上では見慣れないワードを発見しました。それは「お化け屋敷」です。

ラリーさんは「この場所はよく知らないけど、島には ホーンテッドハウス(幽霊屋敷)がいくつかあるから他の所に連れてってあげるよ」と言って、「Haunted House Of Oaklands Tour」へ行くことになりました。

行くことが決まったのは夕食後だったので、真っ暗な中を向かいます。

ホーンテッドハウスに到着。料金は20イギリスポンド(約2,800円)とお高めです。

中に入るとホストのフィリップマーキュリーさんがお出迎えしてくれました。フィリップさんは、聞き取りづらい癖のある英語で、この屋敷に伝わる怖い話をしてくれます。変な匂いがして不気味な雰囲気だったのでとても怖く感じましたが、屋敷へと向かう道中が一番怖かったです。

セントヘレナ島には、他にもピリングスクールやシャイロード、アラームハウス、187歳のゾウガメ「ジョナサン」が住むプランテーションハウスなどなど、幽霊が出るという噂のスポットがあります。約45分程度の滞在を終え、帰りはライトアップされたジェイコブズラダーを見てホテルに戻りました。夜に登ったらもっと怖そうですね。

 


◆187歳(天保12年生まれ)のゾウガメ「ジョナサン」に会いたい

こんなに高齢なのに、実は日本ではほとんど知られていないジョナサン。ナポレオンも唸ったという香り高い味のコーヒーを飲み、朝食を美味しく頂き対面に備えます。それにしてもなんて美味しいコーヒーなのでしょう!こんなコーヒーが毎日飲めるなら、流されてもいいかな?と思わせる味でした。

ジョナサンに会う前に、標高584メートルの小高い山の上にあるハイノールフォートに行ってみます。1799年にイギリス軍がフランス軍の侵入を防ぐために建設され、2010年に観光者向けにリニューアルオープンしました。

そして、いよいよジョナサンのいるプランテーションハウスです。世界最高齢のゾウガメはすぐそこ、なのですが、またしても閉園日。メインゲートは開いていますが閉園。「週末なので閉園」という現実に愕然としました。

でもジョナサンに会いたい!その一心で、ラリーさんに相談すると「外から見られるかもしれないよ」と言って、その場所まで連れて行ってくれました。

いました!世界最高齢187歳のゾウガメ、ジョナサンが!

動いてます!もっと近くで会いたかったのですが、閉園中なので仕方ありません。187歳ということは、1841年生まれ。日本で言えば天保12年。お目にかかれて光栄でした。

 


◆90歳を超えて初めて日本人に会ったおばあちゃん~セントヘレナ島いろいろ~

ジェームズタウンを歩いていると

ラリーさんのお友達に会いました。左端の女性はなんと90歳超えているそうです。とても元気な方で「日本人に会うのは初めてよ」と言っていました。セントヘレナは長寿の島なのでしょうか。

風力発電がたくさんあります。

こちらは石油基地として建設しましたが、失敗に終わったそうです。ラリーさん曰く「こういったお金の無駄遣いが多いんだ」とのこと。

その昔、中国人労働者が住んでいたことから名づけられた「CHINA LANE」というエリアがあります。

CHINA LANE周辺には教会がいくつかあり、どれも数百年の歴史があるそうです。

教会を表すドメインは「.church」ですね。

ジェームズタウンのスーパー。2015年頃までは、「ソ連に住んでいるみたいだ」と言われるほど、物資が不足していたセントヘレナ島。ほとんどは輸入に頼っているそうですが、生活用品からペット用品まで予想以上に何でも揃っていました。

スーパー内の掲示板。子ども向けの絵本の宣伝でしょうか。メールアドレスにドメイン「.sh」が使用されています。

スーパー正面にあった、まとめ買い割引の案内。こちらのメールアドレスのドメインも「.sh」でした。

ホテルのエアコンは日本のDAIKIN。そう言えば、アセンション島のホテルのエアコンも日本製で、Fujitsuでした。こんな絶海の孤島まで営業に来たのでしょうか。すごい。

 

 


◆セントヘレナ島の食事事情

絶海の孤島、セントヘレナの夕日は格別です。そろそろお腹が空いてきました。ラリーさんの友人が経営しているレストランへと向かいます。

ラリーさんの友人の女性が最近開店したといレストラン「Rosie’s」へ。

ビーフ、チキン、マトン、シーフードなどがありどれも美味しそうです。料金も良心的。

セントヘレナにはローカルビールは無いとのことなので、南アフリカのビールをいただきます。料金は2ポンド(約280円)。

シーフードはココナッツが香るカレー風味。料金は8.5ポンド(約1,200円)。とても美味しいです。

本格的な魚のソテー。料金は9.5ポンド(約1,340円)。

ラリーさんが注文したビーフステーキ。料金は7ポンド(約980円)。すごいボリュームでした。

 


◆現地でのSIM購入&速度調査~セントヘレナ編~

セントヘレナ国際空港内にあった、ブロードバンドサービスを提供する「Sure」のショップでSIMカードを購入。料金は18ポンド(約2,500円)です。店員さんは要領がわかってないので、自分でSIMカードをカットしてセッティングを試みましたが、アクティーベーションできません。

ロングウッドハウスの前にあるホテルで再びアクティーベーションを試みるもやはり繋がりません。滞在中は、結局使用できませんでした。

SIMの利用は諦め、宿泊先のホテル「Mantis St Helena」のWifiでネット接続を試みますが、深夜や早朝など時間によっては繋がるものの、利用者の多い混雑している時は全然使えません。ドメイン島巡り史上、最も劣悪なネット環境でした。海底ケーブルが敷設されると、人口約4,500人の島は毎秒数テラビットの超高速インターネットに接続されることになり、島のネット環境は一変しそうですね。

さあ日本に帰ります。上空からセントヘレナ国際空港を見ると、想像以上に崖っぷちの空港であることがわかりました。無事に離発着できて良かったです。

 


■今回訪れた場所

 

■ セントヘレナまでのアクセスはこちら

■「.sh」ドメインの詳細はこちら