数えきれない程あるテレビの旅行番組は、世界中の様々な国の魅力を伝えてくれます。しかし、アセンション島をレポートする旅行番組は、おそらくありません。なぜ行かないのでしょう?ドメイン島巡り第 17 回目は、18 時間しか滞在できない工程だと 14 食中 11 食が機内食になるアセンション島にどんな魅力があるのか、イッテ弾丸トラベラーしてきました。ふしぎ発見できるのでしょうか? アセンション島に割り当てられている ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は、「.ac」です。
◆アセンション島はどこにあるのか?
イギリス領の火山島、アセンション島は南大西洋にあります。1501 年に発見されていますが、1503 年に再発見された際に、再発見日である昇天祭にちなんでアセンション島と命名されました。島には先住民はいません。会社や組織の構成員とその家族で成り立っていて、人口はおよそ1,100~1,200 人ほど。他に 150 人ほどの駐留アメリカ軍がいます。行政府所在地はジョージタウン。
= 目次 =
◆最小滞在日数は「1 日」か「1 ヵ月」の 2 択!!
◆現地での SIM 購入方法&速度調査~アセンション編~
◆グリーンマウンテンにある桜
◆BBC ラジオ中継施設とサメが出るビーチと夕食
◆5 ポンド紙幣が使えない?!町の集会所風バー&クラブ
◆大西洋最大の海洋保護区になるアセンション島
◆あなたのワン切り詐欺電話はここから?
◆ラクダなんていないのに「ラクダ注意」の意味~アセンション島いろいろ~
◆最小滞在日数は「1 日」か「1 ヵ月」の 2 択!!
日本からアセンション島に行くには、チケットの手配はメールのみ、ビザも必要です。そして、月 1 回のセントヘレナ~アセンション往復便を利用する以外に方法はありません。往路便(セントヘレナ→アセンション)の翌日、厳密には約 18 時間後に復路便(アセンション→セントヘレナ)が出発します。この便に乗らないと、次の便は 1 か月後。つまり、アセンションの最小滞在日数は「1 日」か「1 ヵ月」のどちらかになってしまいます。我々ドメイン探検隊は、「1 日」(約18 時間)の滞在を選択しました。
搭乗する「セントヘレナ発アセンション行き」の便名は、チケットが発行されるまでわかりません。
シンガポール、ヨハネスブルグ、ナミビア、セントヘレナを経由してアセンション島に到着。合計 21 時間半のフライトを経て、ようやく到着です。約 18 時間の滞在で、旅行番組が訪れないアセンション島の魅力をお伝えします。
入国審査カウンター以外にあったのは、子供を遊ばせるスペースだけ。審査通過後は椅子が並んだ場所で、職員の OK が出るまで待機。滞りなく入国手続が完了しても、10 分くらい待たされます。売店はありません。RAF(ロイヤルエアーフォースステーション)アセンション空港の到着ロビーは、とてもこじんまりとしています。
タクシーも Uber もありません。予約した現地のガイドさんと空港を出た駐車場で無事合流。17 時22 分、いざ出発です。
雲は多めながらも良い天気。
移動中、やたらと見るこのパイプ。家や施設に生活用水を送っている大事なパイプラインでした。
◆現地での SIM 購入方法&速度調査~アセンション編~
まずは宿泊先「JAMS ACCOMMODATION」にチェックイン。空港から約 20 分のところにありました。スーツケースを置いて、アセンション島でモバイルブロードバンドサービスを提供する唯一のプロ バイダー「Sure」へ SIM カードを買いに行きたいところですが、到着した土曜日は定休日。明日の日曜日も定休日。
JAMS のオーナーに、インターネット環境を確保したいことを相談すると、宿泊施設の隣にある閉店中のコンビニへ。すると、コンビニを開けてくれて、1 日 20 ポンドの「WIFI ホットスポットサービス」を購入することができました。au、softbank のローミングは使用できません(docomo は未確認)。ご注意ください。
速度は問題ありません。不便なく使えます。
コンビニも JAMS のオーナーが運営していました。
ちなみに部屋のエアコンは、Fujitsu。滞在中、他の日本のブランドは見ませんでした。
◆グリーンマウンテンにある桜
グリーンマウンテン国立公園に向かいます。標高 859m、アセンション島で最も高く、人工林としても有名な山です。実は、この山に桜が植樹されている噂があるのです。
宿泊先から車で約 10 分。グリーンマウンテンに到着。登ります。
どんどん登ります。いい眺めになってきました。
蟹を発見。驚かしてごめんね。
続いて羊。
ジャングルみたいになってきました。グリーンマウンテンの森林は、ゼロから組み立てられた世界で唯一の熱帯林と言われています。マウンテンランプと呼ばれる急な曲がりくねった道を登ります。
あっと言う間にジャングルエリアを抜けると、徐々に霧が濃くなってきました。
登り始めて約 10 分。「Red Lion」に到着。ここは、農場労働者を収容するために使われていました。
「ZIG ZAG」と名付けられた道は、そんなにジグザグしていません。
ここからはハイキングコースがあるのですが、時間がないので下山します。
下山中も目を凝らして探しますが、桜の木はありません。
ウサギを発見。アセンション島では、ネズミとウサギ以外の野生生物は法律により保護されています。
18 時 22 分、島のメインの町ジョージタウンを遠くに見ながら、ドライバーのアンドリューさんに桜について聞いてみました。「グリーンマウンテンにある Cherry Trees?知らないなあ。聞いたことないよ。」との回答。桜の写真も見てもらいましたが、やっぱり知らないとのことでした。
下山後、JAM のオーナーにも聞いてみたのですが、「見たことないし知らない」。「グリーンマウンテンの桜」は、ただの噂でした。と思ったら、翌日、アンドリューさんが「Cherry Trees、あるってよ」と教えてくれたのです!なんでも友達に聞いてくれたらしく、私たちが通ったコースではない場所にあるそうです。残念ながら見つけることはできませんしたが、どなたか探しに行ってみてはどうでしょうか?
【参考】
・Climate Change and “Ascension Island”
・On a Remote Island, Lessons In How Ecosystems Function
◆BBC ラジオ中継施設とサメが出るビーチと夕食
BBC(英国放送協会)は、南アフリカや南アメリカ向け放送の中継局をアセンション島に設置しています。島の数少ない観光スポットの一つなので行ってみましょう。荒れた土地が続きます。
大きな鉄塔が近づいてきました。
18時42分、BBC ラジオ中継施設に到着です。広大な敷地内にいくつもの鉄塔が並んでいます。
道を挟んで、有名なビーチ「English Bay」がありました。きれいで、とても小さなビーチ。
続いて「Long Beach」。まずは、浜の全景を見渡せる展望台に寄ります。
展望台から車で約 10 分。「Long Beach」に到着。サメに注意の看板を発見。
19時18分、だいぶ暗くなってきました。夕食を食べにジョージタウンにある「Volcano Club」へ。向かう途中、カメラを向けるとちゃんと止まってくれた可愛いロバに遭遇。本日最後の「野生の動物」です。
お店に到着。ハンバーガーセットフライドチキンセットを購入。混雑していたため 20 分位待ちます。「Volcano Club」はアメリカ軍が運営する、島で唯一の着席して食事が取れるお店です。火~土曜日の夜に営業。支払いは米ドルと、「英ポンドとセントヘレナポンドのコイン」のみ使えます。島全体では、英ポンドとセントヘレナポンドはどこでも使えます。
残念ながら味は今一つでした。
◆5 ポンド紙幣が使えない!?町の集会所風バー&クラブ
21 時 9 分、島のナイトライフを探るべく、宿泊先から徒歩 5 分のバー&クラブ「Two Boats Club」に行ってみます。
バーカウンター。カウンターの前は、屋外のスペースになっていてテーブルが置いてあります。お酒を片手に話が弾んでいるようです。賑やかな雰囲気。全く見慣れない日本人を少し気にしている様子でしたが、危険な感じは一切ありません。私たちもビールとジントニックを注文します。
支払いに 5 ポンド紙幣を出したところ、「これ古いから使えないよ」と戻されてしまいました。
全く知らなかったのですが、5 ポンド及び 10 ポンド紙幣は、2016 年 9 月に新紙幣が発行されており、旧紙幣の使用期限は2017 年 5 月5 日までだったのです。幸い、新紙幣も持ち合わせていたので事なきを得ましたが、頻繁にイギリス領に行ってないとわかりませんね。写真は、RAF アセンション空港の出発ロビーに貼ってあったアナウンス。到着ロビーにも貼っておいてもらえると助かります。
バーカウンターの脇から、室内に入ります。入り口には、ポンド硬貨が使えるスロットマシーンが 2 台。超リトルカジノです。ちなみにカジノを表すドメインは「.casino」です。
室内は、集会所の大きな部屋をダンスフロアにした感じ。まだ踊っている人はは誰もいません。ミラーボールが眩しいです。DJ が出音をチェックしています。DJ は CD でもレコードもなく、PC でした。PCDJ はスタンダードなんですね。
バーの前では、男性陣が何かのスコアを競って盛り上がっています。
その競技とは「Skittles」でした。Skittles はヨーロッパの古い芝生ゲームで、プレイ内容はボウリングとほぼ変わらないようです。ジョージタウンまで行かなくても、飲んで喋って踊って楽しめる地元民専用のバー&クラブでした。
21 時 45 分、宿泊先に戻ります。歩いて 5 分と近いだけあって、深夜 2 時過ぎまでフロアの音が聞こえてきました。気になる人は中々眠れないかもしれません。
【参考】
◆大西洋最大の海洋保護区になるアセンション島
島周辺 44 万平方キロメートルほどの海域が、海洋保護区になる予定のアセンション島。海洋保護区になれば、大西洋最大となります。“信じられないほど美しい”とも言われていので、滞在 2 日目の朝 7 時 45 分、霧雨が少し降る中を美しい自然探しに出発。宿泊先から少し歩いたところに整備された道路を発見。行ってみましょう。
ここは約 600 年前まで活動していたシスターピークと呼ばれる火山エリアでした。
山頂付近に道も見えたので、山道を探しましたが、それらしい道が見つかりません。
天気が悪いせいもあるのでしょうか、美しい自然に巡り会えそうな気がしないので、引き返すことに。後日、シスターピークを調べたところ、丈夫なトレッキングシューズ、たくさんの水、帽子、日焼け止めを持参して登るようにとのアドバイスがありました。スニーカーの私達では、そもそも無理だったようです。
11 時 15 分発のセントヘレナ行きに乗るので、宿泊先を 9 時 15 分頃にチェックアウト。もし乗り遅れたら次の便は 1 ヶ月後。まあまあ急いで、車で 20 分ほどの空港に向かいます。途中、またロバに会いました。このロバたちが、滞在中における「最後の野生動物」です。美しい自然には出会えませんでしたが、かわいい野生の動物たちに会えたので満足です。ちなみに、朝晩は雨が降りやすいそうです。
9 時 40 分、空港に到着。無事に飛行機に乗ることができました。
今回のアセンション島調査における私たちの食事は、実に 14 食中 11 食が機内食。いつも楽しみにしている現地での夕食は残念な味でしたが、地上で食べることができただけで、今回は満足です。
1日目 | 朝昼夜 | 機内食(シンガポールエアー) |
2日目 | 朝昼 | 機内食(アフリア航空) |
夜 | 地上食(Volcano Club/アセンション島) | |
3日目 | 朝 | 地上食(昨夜の残り物をホテルで/アセンション島) |
昼夜 | 機内食(アフリカ航空) | |
4日目 | 朝 | 地上食(ホテル/ヨハネスブルグ) |
昼夜朝昼 | 機内食(シンガポールエアー) |
◆あなたのワン切り詐欺電話はここから?
「アセンション島から謎の国際電話がかかってきた」とのツイートが話題になりました。アセンション島に縁もゆかりも無い日本人に向けて行われた、ワン切り国際電話詐欺。なにか手掛かりがあるかもしれないと思い、島で唯一の通信会社である Sure に行ってみました。
お伝えしている通り、土日が定休日なので本日(日曜日)もお休み。誰もいません。ですが、我々ドメイン探検隊はあるものを発見したのです。
敷地内にあった電話ボックスです。島内で恐らく唯一の電話ボックス。しかも、そのドアは開いたまま。。。我々が到着する寸前まで、ここからワン切り電話をかけていたのかもしれません。
◆ラクダなんていないのに「ラクダ注意」の意味~アセンション島いろいろ~
- 宿泊した「JAMS ACCOMMODATION」には、宿泊者が共同で使える、きれいなキッチンもあります。この日は私達以外泊まっていないのに、未開封の牛乳、フルーツジュース、パンや缶詰等を用意 してくれていました。これらは宿泊料金に含まれているそうですが、なんだか申し訳なくて、手をつ けませんでした。でも、レンジは使わせてもらいました。
桃の缶詰を発見。島には農作物として果物が無いそうです。
- 車で走っていると、日本では見慣れない標識を目にします。これは蟹に注意。
羊に注意。
ラクダに注意。ラクダ・・・?島にラクダがいるの?アンドリューさんに聞いたら「ラクダなんていないよ」。なら、この標識は、どんな注意を促しているのでしょうか?
正解は、 「Hump に注意」でした。「Hump」とは、道路の一部を隆起させ、通過する車両に上下の振動を及ぼすことで運転者に減速を促す構造物の総称です。一般的に 「Hump に注意」の標識は、「SPEED HUMP」や隆起物を表すタイプが多いのですが、ラクダのコブを「Hump」に見立てて注意を促すなんて、とてもユニークですね。島内には、隆起物を表すタイプの標識もありました。
- 月に 1 度しかオープンしないホテル。月に 1 回やって来る飛行機に搭乗しているスタッフが泊まる時以外は営業していないそうです。
- ピンクが目を引くこの建物はアセンション島行政庁舎。道を挟んだところに Sure がありました。
- RAF 空港の出発ロビーで、到着ロビーにはなかった売店を発見!お土産を買って帰りましょう! しかし、中に入ると、煙草と香水と飲み物とスナックしかありませんでした。
- 無料充電サービス。USB 非対応です。
- 空港で働く英軍の軍人を見かけました。イギリスとアセンション島間の飛行機の便は、一般人は急病の時を除き、原則として利用できません。2 年前までは一般人も利用できました。現在、滑走路は修理中のため、小さな飛行機しか離発着できません。
- 出発ロビーを出て外のスペースに行くと喫煙所があります。これから搭乗する飛行機を見ながら一服できる、数少ない空港です。
外にはコーヒーショップもありました。
こんな感じで、アセンション島を弾丸で調べてきました。月に 1 便の飛行機しかないので 1 日か 1 ヶ月の滞在しか選べない、これと言った見どころがない。空港内で「アセンション島ならではのお土産」を売ってないことからもわかるように、観光として訪れる人は、ほとんどいないのです。人気旅行番組が、この絶海の孤島を取材したい理由が見当たらないような気がしました。
■今回訪れた場所