「ドメイン島巡り」は、ツバル(.tv)、アイスランド(.is)、バルバドス(.bb)などなどccTLD(国別コードトップレベルドメイン)の割り当てられている島を訪れて、その島の生活や魅力をお伝えしています。今回は番外編として、ヨハネスブルグです。ご存知のとおり、ヨハネスブルグは島国ではありません。
南アフリカ共和国最大の経済都市にして、世界一治安の悪い犯罪多発都市と言われる街は、安心して観光できるのでしょうか。実際に行って確かめてきました。南アフリカに割り当てられているドメインは「.co.za」です。
※取材は2019年9月に行われました。
◆ヨハネスブルグはどこにあるのか?
ヨハネスブルグはハウテン州の州都。南アフリカ最大の都市でもあることから、南アフリカの首都と勘違いされることもあります。南アフリカは首都機能をプレトリア(行政府)、ケープタウン(立法府)、ブルームフォンテーン(司法府)に分散させていて、プレトリアに各国の大使館が置かれていることから国を代表する首都はプレトリアと認知されています。ヨハネスブルグで利用されている通貨は、ランド(ZAR)。1ランドは、約5.7円(2020年5月現在)です。
= 目次 =
◆犯罪多発都市なのに危険レベル「1」
◆写真撮影NGが多いアパルトヘイト博物館
◆アフリカで一番高い場所
◆超凶悪マンションと言われるポンテタワー
◆ヨハネスブルグのドメイン
◆犯罪多発都市なのに危険レベル「1」
我々ドメイン探検隊は、アセンション(.ac)とセントヘレナ(.sh)を訪れる際、経由地としてヨハネスブルグに立ち寄りました。
2島の取材を終え、ヨハネスブルグに到着したのは21時過ぎでした。
オリバーダンボ国際空港の敷地内にあるプロテアホテルトランジットオリバータンボエアポートにチェックインします。空港内を15分くらい歩きました。
翌日は帰国のため、正午には搭乗手続きをしなければなりません。観光する時間も少ないので、当初はホテルで待機する予定でした。また、外務省海外安全ホームページによると、「殺人、強盗、傷害等の凶悪犯罪が依然として高水準で発生しています。また、空港やホテルからの追尾強盗、カージャック、偽パトカーによる強盗被害も多く発生していますので、十分注意してください。」とアナウンスされていることも、快適なトランジットホテルに待機したい理由でした。
しかし同ホームページの危険レベルを見ると、4段階のレベルの中で最も低い「1」。アナウンスの通り、ヨハネスブルグは世界一治安の悪い犯罪多発都市のイメージですが、危険レベル1ならば細心の注意を払って観光してみることになったのです。翌朝、トランジットホテルに宿泊した我々は、まず搭乗手続きをします。長蛇の列です。
30分ほどして手続きを終え、昨夜急遽ピックアップしたヨハネスブルグの行ってみたいところを効率よく巡るため、エアポートタクシーをチャーターすることに決めました。
空港内のインフォメーションセンターに相談すると、男性スタッフがタクシーを手配してくれます。公認タクシーの運転手は黄色いジャケットを着用。男性から「どこから来たの?」と聞かれ、「日本だよ」と答えると、「あー!ラグビーワールドカップ、もうすぐだよね。楽しみだなあ」と、とてもフレンドリーに接してくれました。さすがラグビー強豪国の南アフリカ。
◆写真撮影NGが多いアパルトヘイト博物館
まず向かったのは、ソウェト地区にあるアパルトヘイト博物館。同地区には、かつてネルソンマンデラ元大統領や、黒人男性として初めてヨハネスブルク主教とケープタウン大主教に就いたデズモンドツツが住んでいました。
あと少しで博物館に到着というところで、宮殿のような建物を発見。マスジッドシラトゥールジャンナというモスクでした。毎日300人が集まり、金曜日には2,000人以上の参拝者が集まるそうです。
空港から約30分。アパルトヘイト博物館に到着です。
入場料は大人1名100ランド(約570円)。チケットは、白人用(Whites)と非白人用(Non-Whites)が配られます。
エントランスを抜けたところにある建物の前に立つと、入口は「白人用(BLANKES WHITES)」と「白人ではない人用(NIE-BLANKES NON-WHITES)」に分かれています。先ほど渡されたチケットに従って入場。一緒に来た友達同士でも、肌の色が異なるのであれば同じゲートからは入れず、アパルトヘイト(人種隔離)を疑似体験できます。
屋内はケージが張り巡らされています。そのケージの中に展示されていたのは、アパルトヘイト時代のID(身分証明書)でした。
白人専用パブの看板。
建物を出ると、等身大の鏡が展示されている通路にでます。これら鏡の中の人々は、1886年にヨハネスブルグで金が発見されたことで集まってきた移民たちを表しています。いわゆるゴールドラッシュで一攫千金を夢見て来た人たちです。
前から見ると、誰一人として顔がありません。
これより先の展示は写真撮影禁止エリアとなります。メインの大きな建物には、白人と黒人の差別を語る数多くの展示物があり、1994年まで黒人が白人と同じ権利を持てなかった悲惨な現実を知ることができます。博物館には日本語のオーディオガイドはありませんが、悲惨さと緊張感は十分に伝わってきました。
アパルトヘイトで有名な場所といえば、サンシティが挙げられるでしょう。博物館から約190km離れた場所にあるリゾート地で、6,230席のコンサート会場「サンシティスーパーボウル」では、音楽に政治は無関係と考えるクイーンやエルトンジョン等の大スターが連日公演を行っていました。
当時、国際連合がボイコットを呼びかけていたにもかかわらず、巨額の報酬を得てサンシティで演奏する著名なアーティストが後を絶たない状況に、スティーヴヴァンザントを中心としたプロジェクト「アパルトヘイトに反対するアーティストたち」は、1985年にシングル「サンシティ」を発表。歌詞は「サンシティなんかで演奏したくない」といった内容で、ピーターガブリエル、ジョージクリントン、マイルスデイヴィス、アフリカバンバータ、ホール&オーツ、RUN D.M.C、マイケルモンロー、ブルーススプリングスティーン、ボノ(U2)、ボブディラン、パットベネター等、総勢52名の著名なアーティストが参加して話題になりました。
◆アフリカで一番高い場所
続いて向かったのは、アフリカで一番高い場所。カールトンセンター最上階にある展望台「トップオブアフリカ」です。アパルトヘイト博物館は郊外にあったので、博物館以外では殆ど人は見かけませんでしたが、ダウンタウンでは至る所に人がいます。
博物館から7km。約10分で着きました。高さ223mのカールトンセンターは、アフリカ大陸で最も高い超高層ビル。地下1階から3階までのショッピングモールでは多くの買い物客で賑わっています。開業当初はリッツカールトンが入ったビルとして、市内でも屈指のステータスを誇っていましたが、1990年代初頭から周辺のダウンタウンがスラム化。ホテルも1990年代後半に撤退を余儀なくされました。
エスカレーターで地下1階まで行き、展望台の入場チケットを購入します。料金は大人1名30ランド(約170円)。専用エレベーターで50階にあるトップオブアフリカへ。
アフリカで一番高い場所です!アフリカ全土を見渡せてしまうくらい、遠くまで見える360度のパノラマビュー。景色は素晴らしいのですが、レストランやお店は閉鎖されていて、展望台は荒んでいました。景色以外、何も無い展望台です。場所によっては、窓が凄く汚れています。恐らく土埃だと思います。
我々が訪れた2019年9月、ヨハネスブルグでは外国人に対する暴動が頻発していました。アフリカで一番高い場所から降りた我々は、すぐにタクシーに乗り込み、次なる目的地へ出発します。
◆超凶悪マンションと言われるポンテタワー
時間的にあと1か所しか行けない状況となれば、ポンテタワーは外せません。タワーのあるヒルブロウ地区に入りました。
ヨハネスブルグで暮らす人ですら、危険だから近づかないと言われているエリアです。車から降りられる雰囲気ではありません。暴動頻発のニュースが頭を過ります。
ポンテシティアパートこと通称ポンテタワーが見えてきました。高さ173m、54階建ての住居用超高層マンションです。
ヨハネスブルグを一望できる一等地にあるものの、アパルトヘイト後にギャングが侵入したことでほぼ全ての居住者が退去。一時期はギャング団・麻薬の密売人・売春婦が押し寄せ、「性的サービスからドラッグまでなんでも数分で手に入る」、「生存時間15秒」とまで言われていましたが、現在はセキュリティを改善して多くの住民が生活しているそうです。本当に安全なマンションになったのでしょうか?警備員のいるゲートを通過して地下にある駐車場で車を降ります。
1階のフロア。月曜日なのに人は全然いません。
どこから居住エリアに入れるのかわからず、清掃中の男性スタッフに聞いたところ、「じゃあ、ついて来て」と作業を中断して連れてきてくれた所は、デラランジェ(Dlala Nje)という敷地内にあるコミュニティセンターでした。ここでは、ポンテタワーに住む子供たちを対象としたワークショップ等を開催したり、ポンテタワーのツアーを企画しているのです。本日の16時からは柔道(judo)が行われるのですね。
早速、見学について相談したところ、54階まで行くには事前予約が必要とのこと。。。突然訪問した我々に親切に対応してくれて、案内担当のスタッフにも電話で交渉を試みてくれましたが、住居エリアに行く調整はできませんでした。しかし、マンション内中央の空洞になっている「コア」と呼ばれる場所まで連れて行ってもらえることになりました。アテンド料金は1名100ランド(約570円)。
古くて今にも壊れそうな階段を上ります。
暗い中、慎重に階段を上っているとコアに到着。圧巻の風景です。壁が崩落しそうな場所もあります。
一時は5階の高さまであったと言われるゴミが撤去されましたが、それ以降の撤去作業はあまり進んでいないようです。
15秒を大きく上回る40分くらいの滞在を終え、生きてポンテタワーを出ることができました。屋内は人が少なく、ひっそりとしていましたがが、凶悪な感じはしませんでした。
空港に向かう途中、チャイナタウンがありました。
参考 「犯罪者の巣窟」と呼ばれたヨハネスブルグの「ポンテタワー」の現状がわかるドキュメンタリー
◆ヨハネスブルグにはドメインがある
南アフリカに割り当てられているccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は「.za」です。南アフリカ(South Africa)は省略形が「sa」なんだから、ドメインも「.sa」でしょ?と思いがちですが、「.sa」は、サウジアラビアによって既に使用されているドメインであったため、旧公用語のオランダ語による「Zuid-Afrika」の略称「.za」を使用することになりました。「.co.za」は取得制限が設けられていません。 タンボ空港内ではジンバブエに割り当てられた「.co.zw」も見かけました。
しかし、ヨハネスブルグを表すドメイン「.joburg」もあるのです。2014年に誕生した「.joburg」は、GeoTLD(geographic top level domain、地理的トップレベルドメイン)の1つで、日本だと「.tokyo」や「.osaka」等が、これに該当します。ちなみに、南アフリカではヨハネスブルグ以外にも「.capetown」(ケープタウン)と、「.durban」(ダーバン)があります。
タンボ空港には、南アフリカのヒーロー、マンデラ元大統領をたくさん見かけました。今回の滞在では「.joburg」を街で見つけることはできませんでしたが、またヨハネスブルグに行く機会があったら、探してみたいと思います。