「マディニーナ(花の島)」または「マティニーノ(女の島)」が語源で、大西洋を横断した航海者コロンブスに「世界で最も美しい場所」と言わしめた島、フランス海外県のマルティニーク。フランス海外県とは、1946年、フランスの海外領土の一部に設置された県のことで、 国内の県と同等に扱われています。フランス本土から約6,800㎞離れたカリブ海にあるフランスの島マルティニーク、どのくらいフランスなのか確かめに行ってきました。割り当てられているccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は、「.mq」です。
※取材は2020年2月上旬に行われました。
◆マルティニークはどこにあるのか?
マルティニークは、南北アメリカ大陸に挟まれたカリブ海に浮かぶ島です。大きさは1,128平方キロメートル、北海道札幌市が1,121平方キロメートルですので、だいたい同じ大きさです。マルティニーク人はフランス国籍を有しています。母国語はフランス語、通貨はユーロです。
= 目次 =
◆島国は独立しない方がよい?ハイウェイが続く南の海に浮かぶフランス
◆「坊やだからさ」と言いながら飲んでいいのはラム酒だけ
◆フランス風バナナ料理など~マルティニークの食事事情~
◆現地でのSIM購入&速度調査~マルティニーク編~
◆.mq ドメインを探したら、マルタ島でマルチーズを探すより大変だった
◆島国は独立しない方がよい?ハイウェイが続く南の海に浮かぶフランス
エアアンティルのATR 72 3S 217便でグアドループを経由しマルティニークへ向かいます。
機内に座席指定はありません。飛行機なのにすべて自由席です!
マルティニーク・エメ・セゼール国際空港に到着。空港のホームページはフランスのドメイン.frが使われています。マルティークはフランスの海外県のため、EU同様簡単に入国できます。入国書類を書く必要もありません。
空港には、毎年3月上旬頃に開催されるカーニバル用の仮面のオブジェが飾ってありました。
パリやカナダのモントリオール、周辺の島からも直行便が出ています。
空港からタクシーに乗ってホテルへ。運転手さんに英語で話しかけたところ通じません。「フランス語で話して」と言われてしまいました。空港を出発し綺麗な海辺沿いを走ると思いきや、巨大なハイウェイが出現。夕方時の通勤ラッシュと重なったせいか、島というより、アメリカの大都市のようです。道路は整備が行き届いていました。
ハイウェイ沿いにあるカリベア ヴァルメニエール ホテルに到着。今まで巡った島では見たことのない、近代的なシティーホテルに驚きます。
ホテル内はパイナップルがデザインされた壁紙が貼られ、流石フランスのホテルでオシャレです。
ハイウェイ沿いはお店が何もなく、夜は真っ暗。少し歩きましたが、車がひっきりなしに通り過ぎ、危ないです。
我々以外、誰もいません。まだ夜7時です。ひっそりとしています。
マルティニークでは、かつて独立運動が起こりましたが、本国フランスの反対にあって独立を果たすことができませんでした。しかし、フランスの支配下のままで良かったのではないでしょうか?フランスからの補助を受けているため、カリブ海の他の島よりもインフラが整備され、生活水準が高い印象を受けました。しかもフランス国民としての権利も与えられているので、マルティニークの人々は、自由にフランス本土へ行き来できるのです。一方、マルティニークの隣のセントルシアは、1979年2月、イギリスからの独立に成功したものの、決して裕福とは言えない状況です。
◆「坊やだからさ」と言いながらコロンブスが言った島を弾丸4時間でまわってみる
マルティニークは、クリストファーコロンブスが 1502年6月15日に上陸した場所で、「世界で最も美しい場所」だと彼を魅了しました。札幌市とほぼ同じ広さのマルティニークを4時間で回ってみます。
近代的なバスが走っていました。チケットは自動発券機で購入。クレジットカード支払いもOK。
まず島の北、山側に向かいましょう。丘の上は高級住宅地だそうです。
マルティニークの県庁所在地であるフォール・ド・フランス中心部から7kmに位置する山の上に、まるでお城のように教会が建っています。
クラシカルでレトロな可愛らしいカトリック教会です。
教会の中に入ると、より荘厳な雰囲気を感じられました。無料で入れます。
バラタ大聖堂から約12km先にアルマ川があります。川のせせらぎを聞きながら、熱帯雨林の森林浴が楽しめます。
急な階段を下りて約100m先にソルジョンダーム(Saut Gendarme)という滝があります。
滝の前で写真撮影。お父さんのポーズが様になっています。
泳いでいる家族もいました。
このうっそうと生い茂るレインフォレストの葉を見ながら、次の目的地へ向かいます。ここは毎日雨が降るそうですが、我々が通った際は降っていませんでした。
ソルジョンダーム滝から14km北西に向かい、デパス蒸留酒製造所(Distillerie Depaz)に到着しました。サトウキビのジュースを使用してラム酒を作る工場です。無料で見学できます。
https://www.depaz.fr/
試飲もできます。
工場近くには、サトウキビ畑がずっと続いていました。
ちなみに機動戦士ガンダム第12話「ジオンの脅威」にて、シャアアズナブルが「坊やだからさ」と言いながら「ラ・マニー(La Mauny)」というラム酒を飲むシーンが有名ですが、このラム酒もマルティニーク産です。
倒壊したサンピエール教会の砦(église du Fort de Saint-Pierre)。1902年5月、マルティニーク島プレー山が噴火しました。火砕流によって、当時の県庁所在地だったサンピエールで約3万人が死亡。生き残ったのはたった3人という大災害で、20世紀の火山災害中最大であったと言われています。街は壊滅し、島の首府がフォール・ド・フランスに移転しました。
近隣の廃墟は駐車場として使われていました。
- 豪華客船
MSCクルーズの豪華客船がダウンダウンのクルーズターミナルに停泊しています。マルティニーク・エメ・セゼール国際空港には、MSCクルーズの展示ブースもありました。
コロンブスを魅了したマルティニークの海です。
「Herve Beuze Patrick Arneton」というトーテムポールが建っていました。
- ダウンタウン
クルーズターミナル近く、エルネスト・デスプロージュ通りを散策します。
サバンナ(La Savane)公園でデモが行われていました。「フランス本国では黄色いベストを着てデモをするが、こっちは赤色なんだよ。」とタクシーの運転手さんが教えてくれました。
子供達も参加しています。
マルティニークの国旗は公式にはフランスの三色の国旗です。実は青字に白い十字の非公式な象徴旗もあるのです。旗が4つ並んでいるのではなく、4つでワンセットの旗です。白い蛇はマルティニーク島にしか見られない固有種です。ハリーポッターのスリザリンの紋章に似ていますね。今回、この象徴旗は見つけることができませんでした。もしフランスから独立していたら、こちらが国旗だったかもしれません。
今回マルティニークを弾丸4時間で案内してくれた、ちょい悪ダンディーなタクシードライバーさん。
運転中は、マルティニーク島生まれのリズムの一種であるビギンを取り入れた『ビギン・ザ・ビギン』を始め、ムーディーなラテンアメリカ音楽をかけてくれました。
マルティニークはフランス人にとって海と山の自然に癒されるバカンス先で、アジアのバリ島のようでした。
◆フランス風バナナ料理など~マルティニークの食事事情~
マルティニークの料理は、フランス料理をアレンジしたクレオール料理です。
カリベア ヴァルメニエール ホテルのレストランで夕食をとります。オレンジジュースを頼むと、フランスの国民的炭酸「オランジーナ」がきました。左の濃い色はマンゴージュース。4.5ユーロ(約558円)です。ホテルなのでちょっと高いですね。
メニューです。フランスらしくコースになっています。前菜とメインのセットが29ユーロ(約3,596円)です。
バナナをコース仕立てで頂きます。前菜は「エビフライとグリーンバナナのフムス」。グリーンバナナをマッシュポテトのようにした上にエビフライを載せた一皿です。グリーンバナナはタロイモのような味でした。
メインは、「イエローバナナのカレー」。クスクスの上にバナナのカレーが載ったヘルシー料理です。あまり辛くなく、ココナッツが効いています。食べるとサフランの香りがふわっと 鼻にぬける特徴的な味です。
ホテルの朝食には、バナナジャムがたくさん置いてありました。焼きバナナを煮詰めたような味。
コーヒーメーカーはフランス語で書かれています。
空港2階に小さなフードコートがあります。
メニューは6種類。
チキンのプレート12ユーロ(約1,488円)
マルティニークのお土産にドライバナナがおすすめです。空港の売店にあります。それぞれ6.9ユーロ(約856円)、2ユーロ(約248円)。
◆現地でのSIM購入&速度調査~マルティニーク編~
空港で利用できるWiFiは2.1Mbps。島内では、Glocalmeを使用しましたが、ほぼ同じスピードで、ストレスなくインターネットができました。
Digicelは、空港内や街にも店舗があります。しかし、SIMは売っていませんのでご注意ください。
マルティニークには、フランスで一番大きな通信キャリア「Orange」が5店舗あります。島で買ったSIMはパリでも使うことができます。
◆マルティニークで.mq ドメインを探したら、マルタ島でマルチーズを探すより大変だった
マルティニークに割り当てられているccTLD「.mq」が、どのくらい街中で使われているか探してみます。
よく目にしたのは「.com」、
またはフランスのccTLD「.fr」。
ホテルにあった電話帳も「.fr」。
バスはGmailを利用していました。
「.mq」が全然見つかりません。ツーリストインフォメーションセンターを見つけたので、「.mq」のことを聞いてみましょう。こちらも「.mq」ではなく「.fr」を使用中。ちなみに、センターを表す「.center」なんてドメインもあります。http://www.tourisme-centre.fr/
若い女性スタッフに「私たちは.mqドメインを探しています。見たことありますか?」と尋ねたところ、「ドメインはみんな .fr を使っているわ」と言われてしまいました。「どこかで見たことありませんか?」と粘ると、隣で聞いていた別の女性スタッフが「たしか電力会社が使っていたかしら?」と言いながらパソコンで調べると、「eDFという会社が使っているわよ」と教えてくれました!日本人はドメインに異常な執着があると思われたかもしれません。
というわけでツーリストインフォメーションから徒歩5分のところにある、電力会社eDFに向かいます。
中に入ってみると、看板にwww.edf.mqと書かれています。今回の島巡りでやっと一つだけ.mqドメインを見つけることができました!
現在、「.mq」を運営しているレジストリはMediaserv社です。しかし、案内されているレジストリのサイトnic.mqにアクセスすると、エラーアナウンス「403 Forbidden」が表示され、何も情報が無い状態です。レジストリのサイトが非表示の場合、そのドメインが提供されていないケースもあるのですが、「.mq」は現在取得可能で、運用しているサイトもたくさんあります。
ドメイン島巡りでは以前マルタ島でマルチーズを探すのに苦労しましたが、マルティニークで.mqドメインを探す方が大変でした。