コロナ禍の影響により、2020 年 9 月を最後に休載していたドメイン島巡りは、2 年2 ヶ月振りに島巡りを再開しました。復活第 1 弾はジャージー。上級者向け(使う人のあまりいない)の特殊な(微妙な)サービスを提供するインターリンクのドメイン探検隊は、ジャージー牛乳、体育の時等に着るジャージ発祥の地のイメージが強いジャージーのあまり知られていない魅力をお伝えします。ジャージーに割り当てられている ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は、「.je」です。
◆ジャージーはどこにあるのか?
イギリス本島の約160km 南にあって、フランスから約22km の距離に位置するジャージーはイギリス王室属領の島。面積は116km²でJR 山手線内側の1.5 倍程度の大きさで、チャンネル諸島で最も大きい島です。フランスが近いこともあって、英語やジャージー語以外にフランス語も使われています。ロンドンからプロベラ機で約 1 時間程度、フランスのカルトゥレやグランヴィルからフェリーでもアクセスできます。通貨はポンド(※1 ポンド=約 165 円)とジャージーポンドです。※2022年11月時点
= 目次 =
◆オーロラに遭遇!
◆大混乱のヒースロー空港
◆乗り継ぎで大ピンチ
◆地元ラグビーチームのスタジアム
◆ナチスの暗号機「エニグマ」に会えるジャージー戦争トンネル
◆車好きにはたまらない機械遺産博物館とガッカリしたジャージー動物園
◆ジャージーの首都セントへリアの中心でジャージー牛乳ソフトクリームを食べる
◆現地でのeSIM 速度調査 ~ジャージー編~
◆オーロラに遭遇!
羽田空港を23 時35 分に出発する深夜便でまずはロンドンへ。ロシア情勢を受け北極圏を通過する北回りでの運行のため、通常より 3 時間長い 15 時間 40 分のフライトです。機内では映画などを見て過ごしていました。北極圏に入ったあたりで、ふと外を見るとオーロラに遭遇!北欧のオーロラ観光ツアーに参加してオーロラを見ることができなかった苦い思い出のあるドメイン探検隊の隊長は、とても感動していました。北極圏通過コースも悪くありません。
◆大混乱のヒースロー空港
ほぼ定刻通りの6 時30 分に着陸。ヒースロー空港到着後、ターミナル3 から5 へ移動して入国審査と保安検査を受けますが、7 時 55 分発ジャージー行きの便への乗り継ぎまで 1 時間以上あるので、十分間に合います。
ところが入国審査場は大行列。空港スタッフの手際の悪さもあって、予想以上に時間がかかります。自動ゲートもありますが日本のようにスムーズにはいきません。やっとの思いで入国審査を終え、保安検査へ。こちらも厳重なセキュリティチェックが行われ、なかなか列が進みません。ギリギリどころか間に合わない恐れがでてきました。空港スタッフに相談しましたが、「間に合いますよ」の一点張りで相手にされません。どんどん時間は過ぎていき、焦りが募ります。
やっとの思いで保安検査を乗り越えダッシュでゲートへ。しかしながらすでにゲートには誰もいません。搭乗手続きは締め切られていたのです。ゲートのスタッフに事情を説明したところ、ブリティッシュエアのサービスカウンターへ案内されました。サービスカウンターは我々と同じように乗り遅れた乗客で溢れています。結局、12 時5 分の振替便に乗ることになりました。
◆乗り継ぎで大ピンチ
本来なら 7 時 55 分発の便に乗る予定だったので、ブリティッシュエアのラウンジで 4 時間以上も時間を潰した後、ジャージー行きのゲートへ。
ところが搭乗券とパスポートを提示したところ、空港スタッフ達は深刻な表情で議論を始めたのです。スタッフの説明によると問題は2 点。1 点目は入国審査の履歴が見つからなかった事、2 点目は我々が7 時55 分のジャージー行きに搭乗済と処理されていた点です。両方とも空港スタッフ側のミスで我々に不備はありませんが、飛行機に乗せてくれません。この便を逃すとジャージーへ行けなくなり、全てのスケジュールが狂ってしまいます。
諦めかけてスケジュールの変更を検討していたその時、空港スタッフから「写真を撮ったら、飛行機に乗ってください。」と搭乗許可がおりました。ようやく、ようやく機内に乗り込むと、乗客の男性の 1 人が我々にウインクをしました。機内を見渡すと“見たことのある乗り遅れた人たち”ばかり。同じ苦労を共にした者同士の一体感に溢れていました。
◆地元ラグビーチームのスタジアム
予定より 4 時間以上も遅い便でジャージーへ到着。我々に残された調査時間はわずか 3 時間しかありません。
そこでタクシーを貸し切ることに。運転手は、40 年前にイギリスのリバプールから移住してきたジェームスさん。彼のように忙しいイギリス生活を捨て、のんびりとしたチャンネル諸島に移住する人は多いそうです。
車を走らせること5 分。空港の程近くにスタジアムがあります。何
のスタジアムでしょう?
チケット売り場。誰もいません。下の方に「JERSEYREDS.JE」と書かれていますね。
ラグビーが関係しているのでしょうか。
事務所に行ってみると男性がいたので、何のスタジアムか尋ねると地元ラグビーチーム「ジャージーレッズ」のスタジアムであることが判明。そしてこの男性はチームのマネージャーでした。「今日はお休みだけど、案内してあげるよ」と特別に場内を見せてもらうことに。ドメイン島巡りは基本的にアポイントを取らずに取材します。再開してもこのコンセプトに変わりはありません。
まずはグラウンド。クラブはお休みのため選手はいません。
続いてクラブハウスへ。日本ではあまり知られていませんが、ジャージーレッズは 1879 年に創設された歴史あるチームで、我々が訪れた翌週にはラグビー元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏が来られる予定だそうです。
最後にジャージーレッズグッズのピンバッジと鐘をいただきました。マネージャーさん、お休みにもかかわらず、ありがとうございました。
◆ナチスの暗号機「エニグマ」に会えるジャージー戦争トンネル
島の内陸へ進みます。途中、ジャージー牛がいるのどかな牧場も。
ジャージーは狭い道が多い。車のスピードを減速させるバンプも多くあります。
ジャージー戦争トンネルに到着しました。ジャージー戦争トンネルは兵器庫、兵舎として掘られた地下トンネルで、ナチスによって死傷者を受け入れる病院に改
築され、現在は戦争の痕跡を伝える博物館に。
チケットを購入します。入館料は16 ポンド(約2,640 円)。
展示されている映像、写真、遺品、資料の多くは、ドイツ占領下における悲惨なジャージーの生活を伝えています。
ドイツ軍が使用していた映写機と通信室。
ガスマスクも。
ナチスの暗号機「エニグマ」を発見。復元ではなく当時使用されていたものです。エニグマは、ドイツ軍が無線を使ってやり取りするメッセージを暗号化するための暗号機で、当時としては最先端の装置。世界で最も強力な暗号鍵を生成していたと言われています。
トンネルの長さは 1 キロ以上。未完成なので、掘りかけの場所もありました。掘削作業はロシア、フランス、ウクライナ等の欧州各地から集められた捕虜によって行われました。
◆車好きにはたまらない機械遺産博物館とガッカリしたジャージー動物園
時間がありません。急いで向かったのはトリニティ教区にある1990 年に開館した機械遺産博物館「パロット・ヘリテージ・スティーム博物館」。
トリニティ教区で生まれ育ったリンドン・チャールズ・パロット氏が収集したジャージー島で使用されていた農作業機、蒸気機関車等を展示しています。今のフォードを築いた名車「T 型フォード」の1923 年モデルもあるようです。
パロット氏は優秀なエンジニアであり、彼の創意工夫によりジャージーの農民の生活を楽にする道具を発明したこともあって「ジャージーのドン」として地元民に愛されている人物です。入館料は8 ポンド(約1,320 円)。中に入ってみましょう。
中に入ると、なにより目を引くのは保存状態の良いクラシックカーがたくさん!
古いはしご車と樽がついている車。
今年の夏まで車検があった車もありました。また、展示品の販売や長期貸出も行っています。
機関車も展示されていました。
博物館の隣にある車の修理工場に「スカイライン」とカタカナで書かれた車がありました。 修理待ちでしょうか。
何時間でも見ていられる機械遺産博物館を離れ、ジャージー動物園に向かいます。 調査開始から、ずっと雨が降ったり止んだりです。
ジャージー動物園に到着。さまざまな絶滅危惧種を保護して自
然に還したり、希少な動物の繁殖にも取り組んでいる動物園です。1990 年にクロライオンタマリンの飼育下繁殖に成功、2022 年にもクロライオンタマリンの赤ちゃんが誕生しています。どんな動物に会えるのでしょうか。期待で胸が高鳴ります。入園料は18 ポンド(約2970 円)。
コース内にマントヒヒ、熊、タヌキのような動物の写真が展示されています。
でも、実物は見当たりません。
カエルや蛇がいるブースみたいですね。入ってみます。
青いカエルがいました。他にも蛇や亀もいました。
ブースを出ると、熊です!ようやく大きな動物に会えました。
◆ジャージーの首都セントへリアの中心でジャージー牛乳ソフトクリームを食べる
市街地へ向かう途中に立ち寄ったモントルグイユ城。ジャージャージーの有名な観光名所。13 世紀に建てられた古城は、約 600 年前のフランス襲来から島を守ったと伝えられています。犬を乳母車に載せて散歩中の若いカップルに日本から来たと伝えると、とても驚いていました。
ゴルフ場を発見。名前はロイヤルジャージーゴルフクラブ。運転手のジェームスさんは当クラブのメンバーらしく、「明日はここでプレーするんだ。天気予
報によると晴れる予定だよ!」とウキウキです。行ってみましょう。
1900 年前後に活躍した伝説のプロゴルファー、ハリー・バードン氏の銅像がありました。同氏はジャージー出身で、全英オープン最多となる 6 回の優勝を遂げ、今日では基本となっている右手の小指(右利きの場合)を左手に重ねる握り方「オーバーラッピング」を編み出し、“モダン・スイングの父”として名を残しているそうです。
市街地に入るとドメイン「.je」を使った広告やお店等を目にするようになりました。
ジャージーに割り当てられているドメイン「.je」を管理するIsland Networks Jersey Ltd.を訪問したものの、実際のオフィスはオルダニー島にあるため担当者には会えませんでした。
ビクトリア朝時代の 1882 年にできた歴史あるセントラルマーケットへ。
ジャージーの首都セントへリアの中心でジャージー牛乳を使ったソフトクリームを食べるためだけに、セントラルマーケットに来ました。
濃厚でミルクの香りが漂う味で美味しかったのですが、本場ならでは!という感じではありません。日本で食べるジャージー牛乳ソフトクリームと、あまり変わらない気がしました。
◆現地でのeSIM 速度調査 ~ジャージー編~
ドメイン島巡りでは、2018 年6 月から2020 年9 月まで、SIM カードを現地調達してその購入の様子をお伝えしてきました。しかし、販売店を探したり購入手続きに意外と時間を取られるので、今回よりeSIM を採用。eSIM に切り替えたことで、簡単にジャージーで使える回線を契約できました。ジャージーのeSIM 速度はジャージー空港で計測。Airalo は31Mbps。
Ubigi は 25Mbps でした。海外に行く予定のある方は、「2022 年、最強の海外用 eSIM はコレだ!海外用Wi–Fiはやめておくべきこれだけの理由」を参考にしてください。