Twitterでナウル共和国政府観光局の公式アカウント(フォロワー数47万人以上※)を見たことがある方は、ナウル共和国(以下ナウル)という国をご存知かもしれません。ナウルは1980年代にリン鉱石の輸出で得た莫大な収入によって医療費、学費、水道や光熱費、税金までも無料になりました。更に国は生活費を支給し、新婚には一軒家まで贈呈。リン鉱石採掘作業も全て外国人労働者に任せて、国民は働かなくても生きていける“太平洋地域で最も高い生活水準”を約30年間を有していました。しかし、リン鉱石の枯渇によって政府は深刻な財政危機に陥り、2003年2月には電話通信ネットワークの故障などで外部との交信が遮断され孤立化してしまい、ナウルは消滅してしまったのでは?等の噂が溢れ、ネット上で話題になりました。公式アカウントによると2019年の日本人観光客はわずか3名。そんなナウルにドメイン探検隊3名が行ってみました。ナウルに割り当てられているccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は「.nr」です。
※2023年7月19日現在
◆ナウルはどこにあるのか?
ナウルは、東京とオークランド(ニュージランド)のほぼ中間である東経166度、赤道の南42kmの位置にあります。国土面積約21.1㎢(東京都品川区とほぼ同じ)、一周約16kmで、バチカン市国、モナコ王国に次いで世界で3番目に面積の小さな独立国家です。主に英語(公用語)とナウル語が使われています。人口は1.2万人(2021年発表)。日本との時差は+3時間。使用されている通貨は豪ドル (1豪ドル=約95円※)です。
※2023年6月時点。
= 目次 =
◆ビザが無いと入国できないナウルに行く
◆高級リゾートホテルがありそうな場所にある国営ホテル
◆島唯一の湖と刑務所の廃墟
◆超美人なミスナウルの親戚は大阪に住んでいた
◆ナウルの料理~ナウルの食事事情~
◆日本の運転免許証で車を運転してみた
◆クレジットカードが使えるようになったナウル~ナウルいろいろ~
◆街で見かけた.nrドメイン
◆現地SIM速度調査~ナウル編~
◆ビザが無いと入国できないナウルに行く
航空券を手配している時に念のため詳細を確認すると、ナウルに入国するにはビザが必要だったのです。日本人が入国する際にビザを必要とする国は少ないので、特に気にしていませんでした。早速、ナウル政府の公式サイトに問い合わせをしましたが、リターンメールとなってしまいます。このままではナウルに行くことはできません。わらにもすがる思いで、ナウル航空の担当者やツイッターアカウント「ナウル共和国政府観光局(公式)」の中の人に相談したところ、両者から直接担当者に連絡を取ってもらうことになりました。数日後、IIS7(Internet Information Service)のCramer Cain氏からビザ取得に関する詳細が英文で届きました。Eチケットやパスポートのコピー、滞在先のホテルバウチャーなどがビザ取得に必要であることが判明。詳細はこちらをご覧ください。
無事入国ビザを取得しました。ナウルへ出発です。日本からナウルへの直行便は現在ありません。ブリスベンからの直行便が一般的です。我々もブリスベンからナウル航空を利用してナウルを目指しました。誰もいないだろうと思っていたチェックインカウンターには、意外と人が並んでいます。
搭乗口は85番ゲート。
機内は空いています。おそらくナウル語であろう会話が聞きこえてきました。
ブリスベンから約4時間半のフライトでしたが、機内食も出ました。
着陸前にナウルを発見。飛行機の窓に収まるくらい小さな島国であることがわかります。
18時半ごろにナウルに到着。あたりはやや暗くなっていました。
ナウル航空の新しいデザインの機体もありました。
空港は非常に小さな建物で右側には飛行機を見物したり、出迎えの人が集まることができるスペースになっています。
観光客は我々を含め、4~5組しかいないような状況でした。
到着ゲートを通過するとすぐに外国人専用のレーンがあるのでそこで入国手続きを待ちます。
入国手続きを済ませ、出口を出たすぐ右側にあるDigicelでSIMカードを購入します。ナウルではDigicelが島唯一の通信事業会社。ホテルにはWiFiがない場合があるのでこちらで購入しておくことをおすすめします。
◆高級リゾートホテルがありそうな場所にある国営ホテル
滞在先のナウル唯一の国営ホテル、Menen Hotel(以下メネンホテル)に向かいます。空港からはホテルの送迎車で他の宿泊客と一緒にホテルまで移動します。
空港から約10分ほどでホテルに到着。
メネンホテルではSIMカードを販売していました。
台湾からの太陽光発電の寄付などを示すプレートを発見。
部屋は至ってシンプル。部屋によっては海側に面してなかったり、テレビがない場合があります。ドライヤーは部屋にありません。フロントに頼んでも貸し出しは無いのでご注意ください。
ホテルから徒歩数分の所にあるミニスーパーマーケット「Abundance」に行ってみます。
商品の多くはオーストラリアから輸入品のようです。
日本語で書かれたカップラーメンもありました。
ホテルに戻るとテラスとバーで地元のパーティーのようなものが開催されていました。
そして夜通し音楽が鳴っていました。
朝、目を覚まして辺りを散策すると、メネンホテルは高級リゾートホテルがあってもおかしくない場所にある国営ホテルだということがわかりました。
ホテルからすぐの所にある、こんな素敵な海岸を散歩することもできるんです。
◆島唯一の湖と刑務所の廃墟
ホテルのカウンターに島を案内してくれるガイドツアーをお願いしました。ナウル一周ツアーは、メネンホテルを北上して島を一周できる道路を反時計回りに進みます。
引用元:ナウルガイドブック(国際機関太平洋諸島センター)
アニバレ湾付近に第ニ次世界大戦中に旧日本軍が作ったバンカー(トーチカ)がありました。島の至る所にこのようなバンカーがあります。以前は木でバンカーが覆われており、外からは見えにくい場所に設置されていたそうです。
バンカーとは、軍用機などの装備・物資や人員を、砲爆撃など敵の攻撃から守るために山に掘った横穴や、コンクリートなどで造った横穴状の施設のことで、日本では掩体壕(えんたいごう)とも呼ばれています。
メネンホテルと反対側にあるエワ地区に入ると、第二次世界大戦記念碑がリン鉱石施設の近くにありました。
石畳をナウルの島をイメージした形の場所もありました。
リン鉱石施設には、島の中央部で採掘した資源を貨物船に積載するカンチレバーと呼ばれる延長ブリッジが設置されいます。ナウルは遠浅のため大型船が接岸できないため使用されます。ガイドさん曰く、稼働時には周囲に多くのほこりが飛散するそうです。
内陸に向かって車で5分程度行くと、ヤシなどの木々に囲まれた湖が見えてきました。
ナウルで最大かつ唯一の湖、ブアダラグーンです。水面が鏡のように反射して綺麗です。この湖は、海や川などの他の水域への流出がない内透湖に分類されます。ナウルでは淡水は稀で、この国には川や小川がまったくありません。
続いて向かったのは、ブアダラグーン近くにある旧日本軍占領時代の刑務所跡。我々が見る限りでは、目印になるようなものはありません。
古いトロッコのレールを通り過ぎ、大きな岩の間を進んで行くと刑務所の入口が現れました。
どんどん奥に進みます。
岩陰の合間に囚人を収容するための部屋が出てきました。建物というよりは岩間を利用して作られた小さな牢屋という印象です。
一番奥にあった他よりも頑丈そうな小屋。
重い罪を犯した、あるいは凶悪な受刑者用だったのかもしれません。刑務所跡は放置された状態なので、風化が激しいように見えました。
◆超美人なミスナウルの親戚は大阪に住んでいた
ナウル一周ツアーはまだまだ続きます。刑務所跡を出た我々は、ピナクルと呼ばれる石灰柱の近くの道を進みます。この辺りは島で最も標高の高いところです。途中、いくつものバンカーを見ました。
さらに進むと、旧日本軍が第ニ次世界大戦中に使用した高射砲が、そのまま残っていました。全体に赤く錆びています。
高射砲の近くにあった穴。射撃するスペースに入るための通路になっています。
次に向かったのはシビックセンター(市民センター)です。
近くの室内運動場のような施設で「NAURU TOURISM EXPO」というイベントを開催していました。
マグカップなど、ナウルに関連したお土産を販売するブース。
そして、なんとミスナウルのアレクサンドラ・ピッチャーさん(Alexandra Pitcher)もイベントに来ていたのです!
どこかで見たことがあると思ったらDigicelの広告に出演されていました。
思い切って話しかけてみると、「私の親戚は大阪に住んでいるので、いつか日本にも行ってみたいんです」と教えてくれました。とても親切で上品な、まさにミスにふさわしい方でした。
引用元:LOOP
ブリスベンからの移動で利用したナウル航空のブースもありました。
日本から来たことを伝えると、ナウル航空はかつて鹿児島や沖縄など、日本からの直行便が存在していたことを教えてくれました。スタッフの皆さんはとても親切で、どんな質問にも笑顔で答えてくれました。
シビックセンターの近くにあるナウル国立博物館に行ってみます。入館料は無料。
島内にある旧日本軍により設置された大砲の場所がひと目でわかる立体模型。該当箇所は赤いマークで表示されています。
ナウルの歴史や旧日本軍により占領されていた時代の写真や残された物などが数多く展示されています。
零戦の残骸。
使用された爆弾も展示されていました。
日本製の刀や日本のビール瓶の展示もあります。
島を案内してくれたカイコさんです。ナウル一周ツアーは2〜3時間ほどでしたが、行きたい場所もリクエストできる柔軟でユニークなガイドさんでした。
◆ナウルの料理~ナウルの食事事情~
お腹が空いたので、カイコさんおすすめのレストラン「The Bay Restaurant」へ。カイコさんによるとナウルでナンバーワンのレストランということで、外観や中も非常におしゃれ。
奥に入ると緑に囲まれた落ち着いたスペースで食事ができます。
ドメイン島巡りでは、島にある和食レストランを訪れることもミッションにしていますが、ナウルには和食レストランも和食メニューもありません。
注文したのは、ステーキサンドウィッチ。
炒め物とマグロのお刺身。「おてもと」の割り箸もついていました。
フィッシュ&チップス、以上の4品を頼みました。料金は全部で約54豪ドル(約5,130円)。どの料理も日本人の口に合います。チップスは、さつまいものような甘い味でした。
メネンホテルでの夕食。アジアのシェフが料理しているので味付けが絶妙でとても美味しい!ドリンクも含めた全7品で約87豪ドル(約8,260円)でした。
朝食は機械トラブルの影響で、提供されませんでした。
エワ地区の大きなスーパーマーケットの近くにある「Tropicana Café」に、デザートを食べに行きました。
注文したのはアイスティー(1豪ドル、95円)とアイスコーヒー(2豪ドル、190円)。
そして、ソフトクリーム(1豪ドル、95円)です。アイスティーとアイスコーヒーは、成分などが表示されたラベルは無いものの、しっかりと包装されて安心して飲むことができました。味はやや甘さが強めです。ソフトクリームはミルキーな味でした。
◆日本の運転免許証で車を運転してみた
現地のレンタカー会社より、日本の運転免許証があれば島で車を運転することに問題がないことを事前に確認していました。
島のメインとなる1本しかない道路を走っていると、検問を受けました。警察官による免許証の確認です。道が1本しかないので、同じ場所で計3回の検問を受けました。通過する時間帯が異なるので、3回とも別の警察官がチェックします。検問の際は、日本の免許証を提示して有効期限がいつなのかを英語で説明して、問題ありませんでした。警察官は高圧的な態度でなく、親切に笑顔で対応してくれました。ナウルでの車の運転は国際免許を取得する必要はありませんが、もし運転免許証の有効期限が切れていたり不備があると、24時間拘束される可能性があるのでご注意ください。
ナウルでは日本から寄付された車が活躍しています。消防署で日本の国旗が貼ってある消防車を発見。
調べてみると、日本外交協会を通じて神奈川県伊勢原市から提供されていました。
こちらは、水槽付消防ポンプ自動車(寄贈部分は旧ぞうさん号の水槽部分のみ)。
埼玉県川口市から提供された救急車。廃車にする予定でしたが、救急車や消防車が不足しているナウルに寄贈されました。
佐々木工務店の軽トラック。
「tas-auto.jp」のロゴが入った車。ナウルは信号がないので、歩行者は道路を横断する際は注意が必要です。
◆クレジットカードが使えるようになったナウル
~ナウルいろいろ~
現在、ナウルは台湾との国交を樹立しており、メネンホテルで見かけたような友好関係を示すようなものを見ることができます。
ガイドのカイコさんからも台湾からの人々が電気や道路の舗装などインフラ整備の工事に訪れて、しばらく滞在するケースも多いことを教えてもらいました。ナウルは2002年7月に台湾との外交関係を断交し、中国との国交を樹立。その後2005年5月に台湾との国交を再度樹立した経緯から、今後の関係は変わるかもしれません。
ちなみに、スーパーマーケットで使用されていた勤怠管理用タイムカードの打刻機は台湾製でした。
街では多くの野犬や放し飼いにされている犬を見ました。
首輪を付けたおとなしそうな犬もいますが、無暗に近づかない方が良いでしょう。
事前調査では、ATMはほとんどなく、クレジットカードが全く使えないということでした。しかし、実際に来てみると街の人が集まる場所には少なくとも2つほどATM(メネンホテルとエワの大きなスーパーマーケット)がありました。2016年からオーストラリアのBendigo Bankがナウルでも事業を開始した影響です。
比較的新しいレストランやカフェではクレジットカードの支払いも可能なところが多く、様々な決済に対応しているカフェもありました。
ナウルは、“アホウドリの糞でできた島”として有名です。カイコさんに聞いてみると、地元の人も当然知っている紛れもない事実でした。蓄積されたアホウドリの糞で島ができて、その糞が年月を経てとリン鉱石というとても貴重な肥料の原料になりました。一時はリン鉱石の枯渇によって政府は深刻な財政危機に陥りましたが、2004年からリン鉱石の2次採掘が開始され、ナウルの主要産業となっています。
◆街で見かけた.nrドメイン
郵便局のメールアドレスに使われていました。
トヨタ自動車の広告にも使われていました。残念ながら多くの.nrドメインを見つけることができませんでした。街では見かけていないですが、.nrドメインが使われているものとしてはナウル政府の公式サイトなどがあります。
◆現地でのSIM購入&速度調査~ナウル編~
空港にて購入したDigicel社のSIM(2GB、31.5豪ドル(約3,000円))を使って速度を測定してみました。メネンホテル近くで測定したところ360Kbpsでした。海外に行く予定のある方は、「2023年、最強の海外用eSIMはUbigi!」をご参考にしてください。