人口約1,800人(2024年国連推計)のニウエは、世界最小規模の独立国家。バチカンに次いで世界で2番目に人口が少なく、人口の4分の1が公務員で金曜日は公休であるせいか、とてものんびりした国です。我々は出入り自由な刑務所に収容されているたった一人の受刑者と話したり、火災と間違えてホテルに駆け込んでみたり、高校で授業を見学してみたり、一軒家の建設を手伝ったり、地元の人におすすめの絶景スポットを聞いたりしてニウエの魅力を探ってきました。ニウエに割り当てられているccTLD(国別コードトップレベルドメイン)は「.nu」です。
◆ニウエはどこにあるのか?
ニュージーランドの北東に位置し、トンガの東、サモアの南東の南太平洋上にあります。面積は269平方キロメートルで世界最大のサンゴ礁でできた楕円形の島です。使用されている通貨はNZドル(1NZドル=約95円※)です。
※2024年5月現在
= 目次 =
◆火災発生!勘違いしてホテルに駆け込む
◆島で唯一の高校で授業を見学
◆出入り自由な刑務所に収容されているたった一人の受刑者と話す
◆日本人が経営する和食レストランや蚊に刺されながら食べるカフェ~ニウエの食事事情~
◆満天の星空観察は暗闇から現れる犬に注意~ニウエいろいろ~
◆地元の人にもおすすめを聞いた“ニウエ絶景スポット巡り”
◆街で見かけた.nuドメイン
◆現地SIM速度調査~ニウエ編~
◆火災発生!勘違いしてホテルに駆け込む
ニュージーランドから約3時間のフライトでニウエ国際空港に到着。
空港に隣接している小屋ではアクセサリーなどのお土産を買うことができますが、出国手続き後の空港にはお土産を買う場所はないのでご注意ください。
空港からホテルの送迎車に乗って約7分。宿泊先のシニック・マタバイ・リゾート・ニウエ(Scenic Matavai Resort Niue)に到着です。
ホテルのロビーにあった大きな絵から「美しい海を汚さないで」という強いメッセージが伝わってきました。
部屋はオーシャンビュー。ウェルカムドリンクとして、ココナッツの実をそのまま使った「ココナッツウォーター」が用意されていました。冷えていて量もたっぷりで、とても美味しい!
室内はエアコン完備。ベッドもふかふかです。運が良ければ、バルコニーからクジラやイルカを見ることもできるそうです。
敷地内には人懐っこい猫たちがいて、宿泊客にも可愛がられていました。
ちなみにニウエに動物病院はありません。動物に何かあった場合は、ニュージーランドのボランティア慈善団体に連絡をするとサポートを受けられます。同団体の運営は寄付により成り立っています。
ニウエにはバスやタクシー等の公共交通手段がないため、ホテルでレンタカーを手配してもらいました。3日間で387NZドル(約36,765円)、車種は日産。車内では「SDカードがありません」と定期的にアナウンスが流れます。
ホテルから車で10分ほど走ると、原っぱのような場所に大量のゴミが捨ててありました。
どうやらゴミ捨て場のようです。缶や瓶などは分別されており、必要な人は持ち帰ることもできます。
大きな白物家電までありました。
日没後、島を調査した帰り道に再び同じ場所を通ると、なんとゴミ捨て場から大きな炎が上がっています!周りには誰もいません。急いでホテルへ戻って受付に火災発生の旨を伝えたところ、「ゴミを燃やしているだけだから問題ない」と言われてしまいました。
夜遅くにゴミを燃やして山火事にならないのでしょうか。心配性の我々は翌日の朝に再びゴミ捨て場に向かったところ、昨夜ゴミを燃やしていた公務員の方がいてお話を伺うことができました。ニウエの公務員は週休3日とのことで、公務のある日は毎日ゴミを燃やしているので心配はいらないそうです。安心しました。
◆島で唯一の高校で授業を見学
ニウエの識字率は98%で太平洋島嶼国の中で最も高いグループに属します。3歳から16歳まで無料の義務教育制度があり、小学校卒業後は7年制の高等学校があります(国際機関 太平洋諸島センター)。そこで、島で唯一の高等学校、ニウエハイスクール(Niue High School )に行ってみました。平屋の校舎が並んでいます。
突然の訪問にもかかわらず、校内を案内してもらえることになりました。こちらは立派な体育館。学校には生徒約200人が通い、教師は約40人とのことです。
そして、授業も見学させていただくことになりました!溌溂とした笑顔の学生たちが、英語の授業を受けています。教えているのはフィジー出身のジミー先生です。教師はネクタイに正装の黒い巻きスカートを履いています。
「STOP Bullying」(いじめを無くそう)、「The signs of Autism..」(自閉症の兆候)などのポスターが教室のドアに貼ってありました。
高校の同じ敷地内に大学もありました。人口約1,800人の島国に大学まであるのは驚きですね。
こちらは大学の校舎。高校と同じく平屋です。
受付を訪ねましたが誰もいません。どうやら大学の授業はリモートが中心のようでした。
次の目的地へ移動していると、軽快な音楽が鳴り響く建築現場を通りかかりました。
見学をしていると、陽気な大工さんたちが「トタン板を運ぶのをちょっとだけ手伝ってよ」と声を掛けて来たので、ちょっとだけ手伝いしました。
屋根の上にはこの家の主もいて、一緒に家を作っているそうです。かなり大きいですが、建築費用は大体200,000NZドル(約1,900万円)だと、こっそり教えてくれました。完成が楽しみですね。
◆出入り自由な刑務所に収容されているたった一人の受刑者と話す
ニウエには一軒だけ刑務所があります。事前の情報によると、収容されている受刑者はいないとのことで、外観だけ見に行くことにしました。刑務所の場所はGoogle Mapに載っていません。この平屋の白い建物が刑務所です。
近くまで行くと看守の方が出てきてくれました。日本から来たことを伝えると、刑務所内を案内してくれることに。看守の方はトンガからニウエに来て、刑務所内の看守室で生活されているそうです。
刑務所内の部屋は全8室。お手洗いはありません。近くの草むらで用を足すと教えてくれました。
部屋の中。誰も収容されていないせいか、生活感がありません。
トイレはありませんが、シャワー室はあります。
看守の方と刑務所内を巡っていると、奥の部屋から顔を出して手を振る体格の良い青年がいます。なんと、現在ニウエで唯一収容されている受刑者でした。部屋から出てきて「どこから来たの?」「日本?僕は日本にYUKIという友人がいるよ」「アニメが好きだよ」と話してくれました。服役と言うよりも合宿所で生活しているように見えました。
彼は19歳の時に15歳のガールフレンドを妊娠させた罪で収容されています。部屋の中を見せてもらいました。ベッド、机とその上に雑誌やノート、ペンなどがありました。
刑務所を後にした我々は、歩いて数分のところにニウエ・ローン・ボウルズ・クラブ(Niue Lawn Bowls Club)を発見。ローンボウルズとは、芝生の上で合成樹脂製のボウルを転がして目標球(ジャック)に近づける競技で、年齢や体力、性別や障がいの有無などに関係なく、誰もが一緒に楽しめるスポーツです。競技人口は世界で200万人(推定)と言われています。
ニウエのローンボウルズチームは、2023年8月にオーストラリアのゴールドコーストで開催された世界選手権に出場しています。
◆日本人が経営する和食レストランや蚊に刺されながら食べるカフェ~ニウエの食事事情~
ニウエで外せない和食レストランはカイイカ(Kaiika)です。ニウエにたった1人と言われる日本人、和田泰一さんが経営するお店です。残念ながら和田さんは不在でした。
和食以外に洋食もあるメニューの中から、NIUEAN白身魚とパパイヤのピザ(24NZドル、約2,280円)を注文してみました。少し辛くて美味しいです。テーブルには醤油も置いてありますね。
野菜の天ぷら(24NZドル、約2,280円)。日本人オーナーのお店だけあって本格的です。
こちらはSMAPLER OF THE DAY セット(32NZドル、約3,040円)。揚げ寿司やカルパッチョなど、色々な料理を少しずつ楽しめました。
宿泊したシニック・マタバイ・リゾート・ニウエのレストランでは、朝食と夕食を食べました。朝食はビュッフェ形式です。
夕食はサンセットを楽しみながら、いただきます。
もちろん猫たちもいます。
この日の夕食はギターの生演奏付き。我々に気がつくと、日本語で「きらきら星」を歌ってくれました。低く美しい声で、歌詞も完璧です。
素敵な演奏を聴きながら食べた料理は、Polynesian Coconut Curry(32NZドル、約3,040円)とGarlic Spawn Spagetthi(37NZドル、約3,515円)、Sticky Niuean Honey Pork Belly(42NZドル、約3,990円)。お値段は高めですが、ボリューム満点で見た目よりも優しい味でした。
島に幾つかある小さなカフェにも行ってみました。まずは、アロフィエリアにあるクレイジー・ウガ・カフェ(Crazy Uga Café)。どれも屋外なので、昼間は蒸し暑く、夜は蚊に刺されるので注意してください。
地元の人たちにも人気のカフェです。店内はかなり蒸し暑いです。
Crazy Club Sandwich(18NZドル、約1,710円)のポテトは絶品でした。
続いて訪れたのは、ハイオ・カフェ(HIO CAFÉ)。夜はたくさんの人で賑わっています。予約をしないで行ったところ、店外の暗い席で食べることに。
Fish Tacos(24NZドル、約2,280円)とWaffle(14NZドル、約1,330円)、Deep Fried Seafood(25NZドル、約2,375円)を注文。蚊にたくさん刺されてゆっくり食べている余裕はありませんでしたが、かなり濃い味でした。また、食事中に放し飼いの犬がたくさん寄ってきます。料理を欲しがるわけでもなく、ただじっと見ているだけで可愛かったです。
◆満天の星空観察は暗闇から現れる犬に注意~ニウエいろいろ~
人口が少なく、高い建物などもないニウエは空が広くて澄んでいます。夜には満天の星空を肉眼で見ることができました。
しかし、感動的な星空を見る際は犬に注意してください。車を止めて車外に出た途端、暗闇から現れたたくさんの犬が我々に向かって走って来て、吠えられました。我々は慌てて車内に戻りました。ホテルやレストランなど安全な場所以外で星空を楽しむ際は、犬に気を付けてください。
タオガニウエ博物館(Tāoga Niue Museum)は、2004年のサイクロン・ヘタによって破壊されたフアナキ文化センター&博物館の跡地にあります。2018年に建てられました。靴を脱いで入る部屋でニウエの詳しい歴史を映像で見ることができます。島では珍しくしっかりと冷房の効いた部屋で快適でした。入館料は1人10NZドル(約950円)。
島で一番大きなスーパーマーケット、スワン・ソンズ・スーパーマーケット(Swan Sons Supermarket)は、刑務所のすぐそばにありました。ペットボトルの飲料はなかなか手に入らないので、ここで買っておくことをおすすめします。
スワン・ソンズ・スーパーマーケットがあるスワンソン商業複合施設内の「K mark」という看板が目印のケンドラス コレクション(Kendra’s Kollection) 。おもちゃ、ゲーム、衣類、家庭用品など、あらゆる種類の商品が揃っています。
「NIUE」とプリントされているTシャツもあって、お土産を探すのも良いかもしれません。明るく気さくな店員さん。支払いはクレジットカードもOKです。
クック諸島と同様に、津波が来た際の避難ルートを示す看板が島内各所にありました。
◆地元の人にもおすすめを聞いた“ニウエ絶景スポット巡り”
世界最大の珊瑚礁でできたニウエには、他の島では見られない洞窟や渓谷があります。ドメイン探検隊は、10ヵ所の絶景スポットを駆け足で巡ってみました。
1.ホエールズ&ドルフィンズ(WHALES & DOLPHINS)
クジラとイルカに会える海岸。残念ながら、どちらも見ることはできませんでした。ニウエでクジラが見やすいのは、7月から10月だそうです。
クジラとイルカを見つけやすそうな眺めです。
2.ウトゥコ岩礁(UTUKO REEF)
道路から入口の階段を降りると、すぐに着きます。
海底の珊瑚礁がはっきりと見えるほど、海の水は透き通っていました。
3.マタパ峡谷(MATAPA CHASM)
地元の方おすすめの絶景スポット。少々道が悪いので運動靴で行きましょう。
ジャングルのような道を抜けると峡谷にたどり着きます。シュノーケリングスポットとして有名だそうです。
4.タラバ・アーチズ(TALAVA ARCHES)
鋭い岩が連なる危険な道を進むため、上級者向けの絶景スポットです。
ドメイン探検隊の1名は開始10分ほどで転倒、負傷して引き返しました。更に30分ほど進むとロープでほぼ垂直の斜面を下る箇所があります。危険なため残りの隊員も、ここで断念。この先に絶景が待っているので、訪れる予定の方は装備を万全にしてから挑みましょう。道中スマホは圏外になったので注意してください。
5.タウトゥ・シー・トラック(Tautu Sea Track)
美しい日の出が見られる絶景スポットと聞いて、朝6時に車で向かいました。目的地周辺の道は狭く、両脇に草木が生い茂っているため、車内に警報音が鳴り続けます。しかし、悪路を抜けると絶景スポットに到着しました。朝早いので我々の他に誰もいませんでした。
6. アバテレ・ビーチ(AVATELE BEACH)
絵画のように美しいビーチと言われています。
透明度が高く、浅瀬が続いていました。
7.トーゴ・キャズム(TOGO CHASM)
比較的行きやすい絶景スポットのトーゴ・キャズム。
ニウエの壮大な自然を感じることができます。
ハシゴがかかっている場所がありました。そこを下ると更に先に進めるのですが、落下の危険を感じたため、ここで引き返しました。
8. アナパラ・キャズム(ANAPALA CHASM)
ハクプ村の隣にあります。階段もあるので比較的探索しやすいスポットです。
崖を下ると、その底に冷たい水を湛えた泉がありました。川や湖のないニウエにとって、昔から水源として重要な場所。真っ暗なので、携帯の懐中電灯機能で照らして撮影しました。
9. アヴァイキ洞窟(AVAIKI CAVE)
昔は王の浴場として使われていたアヴァイキ洞窟は、ニウエで訪れるべき最高の場所と言われています。日本が整備などのサポートを行ったことが看板に記載されていました。
他の絶景スポットにはないガッチリと整備された通路は、とても歩きやすかったです。海岸に出る直前のところまで来ると、輝いた日差しが幻想的でした。
10. ハイオ・ビーチ(HIO BEACH)
美しいサンセットを見ることができる絶景スポットと聞いて、行ってみました。蚊に刺されて大変だったハイオ・カフェの近くにあります。
少し曇が多めの天気でしたが、静かで美しいサンセットでした。
◆街で見かけた.nuドメイン
ニウエに割り当てられている国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)は、「.nu」です。ちなみに「.nu」は北ヨーロッパで人気が出てしまったドメインとしても知られています。「nu」はスウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語で「今」を意味することから特に人気となりました。ニウエの電力会社のメールアドレスでは、ニウエ政府用のドメイン「.gov.nu」が使われています。
病院の連絡先にも「.gov.nu」が使われていました。
ニウエの工業団地の連絡先。
◆現地SIM速度調査~ニウエ編~
ニウエ国際空港内にあるTelecom NiueでSIMを購入。スタッフが設定もしてくれます。設定完了まで1人15分ほどかかりました。
プランは14日間で55NZドル(約5,225円)しか選べません。
島の僻地では電波が届かなくなることもありましたが、中心部で速度を測定してみたところ5.5Mbpsでした。海外に行く予定のある方は「最強の海外用eSIMはコレだ!海外用Wi-Fiはやめておくべきこれだけの理由」を参考にしてください。